2012-01-01から1年間の記事一覧

小熊英二『社会を変えるには』

これはまちづくり関係者にも是非読んで欲しい本だ。 本の焦点は「デモ」だが、「デモ」が抱える問題、可能性は、まちづくりで盛んに言われてきた「参加」「参画」に通じている。ともに、選挙で選ばれた首長さんや議員さんにお任せするだけでは足りない、それ…

西部講堂&日仏学館

久しぶりに西部講堂に行ってきた。もう何十年と中に入っていなかったように思う。 イベントは『関西クィア映画祭2012』。「タイヘン×ヘンタイ」をキャッチコピーに、「性のあり方は多様だ。私たちは生きていける」というコンセプトの映画祭だ。 見たのは…

孫崎亨『戦後史の正体』

アマゾンでコミックなどを除くと総合1位だったので、買ってみた。 元外務省・国際情報局長が書いた、米国からの圧力を軸に戦後70年を読み解いた本とのふれこみだ。 書かれていることは、そんなに目新しいことばかりではない。 たとえば、負けたとたんに、…

リア・ロドリゲス 『POROROCA』&三文オペラ@びわ湖ホール

昨日、今日と、珍しいものを見てしまった。 昨日はアルティに来ていたリア・ロドリゲスの『POROROCA』。ブラジルのリオのスラム、マレ・ファベーラに本部兼ワークショップスタジオを構え、人々と関わりながら創作している集団だという。 解説によれば「猥雑…

乾久美子&山崎亮著『まちへのラブレター』

山崎さんの本は、このところ山のように出ている。 僕たちもお願いしての結果とはいえ「ようこんなに出せるなあ!?」と感心してしまう。一応、たいがいの本は目を通しているが、そのなかで『コミュニティ・デザイン』の次に興味深かった本だ*1。 ただ、一…

宗田好史『イタリアの村はなぜ美しく元気かなのか』その3

先日書いた四つの出来事に続き、今度はイタリアの農村が捉えた三つの変化とはな何か。 三つの変化 第1は農業政策の転換だ。 イタリアの農村は戦後の農地解放も不十分だったため、多くの問題をかかえ呻吟していた。ところがイタリアは国際社会への復帰に熱心…

「ALTY芸術劇場〜井上道義 オーケストラアンサンブル金沢」

暑くてパソコンを触る気分になれずに、随分間があいてしまった。先日書いた宗田さんの本の続きも書かなきゃ行けないんだけど、今日は別の話題にしよう。[:W400] 近くにあるアルティというホールで「ALTY芸術劇場」がスタートした。上質な公演と四季折々のお…

宗田好史『イタリアの村はなぜ美しく元気かなのか』その2

帯では「農村観光・有機農業 成功には理由がある」と書いた。 どんな理由なのか。まず、きっかけとなった動きから見てみよう。 四つの動き 第1は1965年、元侯爵シモーネの主導で誕生したアグリツーリスト協会の動きだ。当初は没落した貴族の若旦那の夢物語…

宗田好史『イタリアの村はなぜ美しく元気かなのか』その1

宗田好史さんの新作『イタリアの村はなぜ美しく元気かなのか〜市民のスロー志向に応えて農村の選択』ができた。 宗田さんはイタリアの専門家で、いままで『イタリアのにぎわいまちづくり』など、イタリアの旧市街地の保存から都市政策・観光政策について語っ…

[本の紹介]山納洋『カフェという場のつくり方』

スタッフの岩崎君が力を入れてつくった本だ。 コモンカフェを運営している著者が、生き方としてのカフェにエールをおくり、続けるための心得やノウハウを書いている。 だから、自分たちの居場所をつくろう! カフェを起業しようという方は、読まれると良いと…

茶谷幸治『「まち歩き」をしかける〜コミュニティ・ツーリズムの手ほどき』

これは『まち歩きが観光を変える』を書いて下さった茶谷幸治さんの新刊だ。 前著は長崎さるく博のドキュメントだが、その後、大阪あそ歩のプロデューサーをされた経験も踏まえて書かれたまち歩きの入門書である。 驚くのは「まち歩き」への愛情と拘りの深さ…

【環境デザイン学科】公開特別トークイベント 『原発と環境デザイン』

京都造形芸術大学で行われた公開特別トークイベントを聞いてきた。 一番興味深かったのは竹内さんが紹介されたムカヒ・ウガンダ大統領のリオ会議スピーチだ。いま、世界で注目されているそうだが、その最後に、「発展は人類に幸福をもたらすものでなければな…

新雅史『商店街はなぜ滅びるのか』

ちょっと評判になっているので読んでみた。 昨年の関沼博『フクシマ』、古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』に続き上野千鶴子さんの薫陶を受けた若手だとのこと。 新さんのこの本も、新進気鋭らしく、すごく大きな視点から思い切った素描を試みていて面白…

佐伯啓思『成長経済の終焉〜資本主義の限界と「豊かさ」の再定義』(2003)

経済成長と幸福、豊かさについて書かれた本を探していて出会った一冊。 2003年というと十年ほど前だが、すでに「高度経済成長は・・・人口増加社会であり、そして経済的な「豊かさに」人々が飢えていた状況の産物であった」と書かれていた。 当時、構造改革…

ダグラス・スミス『経済成長がなければ私たちは豊になれないのだろうか』

山崎亮さんと藻谷浩介さんの『経済成長がなければ、僕たちは幸せになれないのか』という本を紹介したが、この本のなかで、山崎さんが対談のヒントとなった本として紹介された本だ。 ただ、普通の本じゃない。 戦後の経済学を見事に「ちゃぶ台返し」してしま…

藻谷浩介、山崎亮『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか? 』

昨年7月、同名の対談をスタッフの井口さんがしかけ、1年かけて本にまとめた。 もともとは『コミュニティデザイン』の広報の一環で、ホームページに載せる対談を藻谷さんにお願いしたところ、話が弾み、対談をすることになったものだ。 山崎さんの"藻谷浩介…

京都の地域景観づくり協議会制度

同じく京都市市民しんぶんに、地域と建築主の意見交換を義務づける「地域景観づくり協議会制度」の宣伝が載っていた。景観まちづくりの方針等を定めた計画書を市が認定すると、対象の地区内で建物を建てようとする者に、できるだけ早い段階で協議会との意見…

プランナーとプレイヤーの両立は可能か?

4月以来、ブログに手を掛けるヒマと元気がなくなって、書いてあったものもアップするのを忘れていた。 というわけで時期遅れだけど、せっかくだからアップしておこ。 ※ 2012年度第3回都市環境デザインセミナー「プランナーとプレイヤーの両立は可能か?」…

スノーホワイトと書店ガール

久しぶりに時間ができて、嫁さん希望の映画スノーホワイトを見てきた。 それなりに面白かったけど、批評を書くとなると良いことが書きにくい。 グリム童話のヒロイン像を塗り替えて見せたという意味では、シンデレラ像を書き換えたエバーアフター(1998年)…

山内道雄『離島発 生き残るための10の戦略』

海士町の町長さん、山内道雄さんが2007年に書かれた本。 帯には「財政破綻前夜、生き残りに向けて立ち上がった離島の町。難問解決のヒントがここにある」と書かれている。 実際、島丸ごとブランド化など果敢な取り組みが書かれているが、一番気になったのは…

三浦しをん『舟を編む』、大崎梢『プリティが多すぎる』

どちらも編集者が主人公の物語。 三浦しをん『舟を編む』は売れているとは聞いていたが、アマゾンを見に行くと堂々1位だった。4月10日に本屋大賞をとった影響もあるのだろうが、凄い売れ行きだ。ちなみにジュンク堂系列の売れ行きをみてみると、この1ヶ月…

中川真+編集部『これからのアートマネジメント〜ソーシャルシェアへの道』

アートでソーシャルシェアって何だろうと思って買ってみた。 中川真+編集部による序文では、現在のアートとアートマネジメントには、社会問題になりやすい場から、一見何事もない日常の場まで、ともにシェアする新しい公共空間(公共圏)をつくること、また…

「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk#3

久隆浩と「なる都市」の方々〜まちづくりで飯が喰える時代がくる!くる? 「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk#3が4月12日に行われた。 今回はおとなしめのイントロと、久さんの「都市・まちづくりは「お金と権力」から「共感・関与」の領域へ」…

「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk#2

「まち飯」の面々〜いま、都市をつくる仕事に、もの申す 「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk#2が4月5日に行われた。 山崎義人さんと谷亮治さんの絶妙なパフォーマンスで始まったCrosstalk。スタッフの岩切さんが報告するので、僕は思いつきを書…

3月のイベント

被災地復興のためのビジネスイノベーション(3.08京都) 被災地のためにビジネスベースでできることを探ろうというシンポジウム。AIDMAにかえてAINAS(Attention Interest Network Action Share)を提唱されている佐分利さんの基調講演のあと、yahooや深仲メ…

森巣博『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』

日本の現状を糞味噌にけなした本。 とりわけ大手マスコミの堕落にたいして厳しい。 「利潤の私益化、費用の社会化」が新自由主義思想のキモという断定は、スッキリしていて気持ちが良い。だが、読んでいて明るい気分にはなれない。もう、ほとんど絶望という…

黒野伸一『限界集落株式会社』

帯には逆転満塁ホームランの地域活性エンターテイメントとうたっている。実際、サクセス&ラブストリーで、まあ、堅いことを考えなければ、楽しめる本だ。 ビックリしたのは、次の場面。 就農研修にきた千秋が聞く。 「だけどこの村、いずれ本当に消滅しちゃ…

花街の建築と景観+舞妓さん遊び

新潟大学の岡崎さんに誘われて弘道館で行われた「花街の建築と景観」というセミナーに嫁さんと一緒に出かけた。お目当ては終わってからの舞妓さん遊び体験。二人とも一度も経験したことがないし、一生に一度ぐらいは体験したい、というのでいさんで出掛けた…

竹内昌義『原発と建築家』、内田雄造追悼文集『ゆっくりとラジカルに』

3.11から1年がたち、原発事故の強烈な印象もだんだん薄れてきた。 昔、黒澤明の映画※1を見て、きっとこうなるんだろうと恐れていた破局と比べると、ずっと影響が少なく、人が目の前でバタバタ死ぬという事態にはなっていない。ひょっとすると首都圏3000万人…

藤崎達也著『観光ガイド事業入門』

日本でもようやくエコツアーをはじめとしたガイド事業が育ってきている。 なかには、まちの誇りやアイデンティティを取り戻すことを目的とした、非収益事業として行われているものも多いが、中途半端な物もあるし、収益事業を目指しながらもうまく行っていな…