藤崎達也著『観光ガイド事業入門』

 日本でもようやくエコツアーをはじめとしたガイド事業が育ってきている。
 なかには、まちの誇りやアイデンティティを取り戻すことを目的とした、非収益事業として行われているものも多いが、中途半端な物もあるし、収益事業を目指しながらもうまく行っていないところも多いと聞く。
 赤字になってしまい継続が出来なくなる・・といった事態を避ける一助として、是非、本書を読んでもらいたい、という思いで出版を引き受けた。

 著者は知床ではじめてガイド事業を成功させた人。中身は特にマーケティングに力を入れている。詳しくは目次をご覧いただきたい。

 実はこの本、見せて頂いた最初の草稿では、サッパ船アドベンチャーズで有名になった田野畑村の番屋エコツーリズムへの熱い思いが最初に書かれていた。あまりにも熱すぎて、「ガイド事業入門のとっぱしにこれはないでしょう」と言って、事例としては本文に、思いはあとがきにしてもらった。
 それはともかく、震災後四ヶ月半後にサッパ船アドベンチャーズを再開された地元の人たち、支援した人たちの熱い思いは忘れられない。
 観光は、いろいろ言われるけれど、人々がまっさきに復活したくなるような、それだけの力があるものなのだ。それが売上げから見れば象徴的な意味しかなかったとしても、地域主体のツーリズムの原点はここにある。

 着地型には経営やマーケティングリスクマネージメントなど足りない物が一杯あるのかもしれないけれど、それはこの本や関連書を勉強したり、経験を積めば補える。本当に大事なのは本物の心だ。さすが現場を担っておられるだけに、藤崎さんのこの本には、書いても伝わらないこういったことも、行間にあふれているように思う。

(おわり)

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観光ガイド事業入門: 立ち上げ、経営から「まちづくり」まで