乾久美子&山崎亮著『まちへのラブレター』

山崎さんの本は、このところ山のように出ている。
 僕たちもお願いしての結果とはいえ「ようこんなに出せるなあ!?」と感心してしまう。一応、たいがいの本は目を通しているが、そのなかで『コミュニティ・デザイン』の次に興味深かった本だ*1。
 ただ、一気には読めなかった。つまってしまうところが結構多い。特に最初のほうは、「僕たち勉強いっぱいしています!」みたいに、本や考え方や人がいっぱい出てきて、いちいち注を読まないといけない状態が続く。普通ならそこで投げ出して二度と開かないのだが、なんとなく気になって読み続け、読み通してしまった。
 最初はきっとお二人とも気負っていたのだろう。ラフな口調を前面に押しだしながらも、バチバチ武装しているって感じがする。ただ、それが世界の深さ、広がりをも感じさせているのは、往復書簡という形式の功績だと思う。成功させるのは難しい形式なのだが、編集スタッフの井口さんは不安をよく飛び越えたものだ。お二人への信頼がそれだけ深かったのかな?。


 建築の素養がない僕でも読み通させたのは、建築とコミュニティデザイナーがコラボするという真剣勝負の場の舞台裏が垣間見える面白さだろう。コミュニティデザインといってもいろいろな場面があるだろうが、つくることと協働するコミュニティデザインを山崎さんがどう考えているかもボンヤリ伝わってくる。
 特に、こういうコミュニティデザインでは「つくることに携わっていたころに修行させてもらったバランス感覚が役立つ」という話は納得できた。


 自分たちの本だから当然だけど、建築よりの人が、コミュニティデザインの次に読むなら、この本だとお薦めしたい。

*1 ただし藤村さんとの対談本は読めていない。
   注文したつもりになって忘れていた。
   また『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?』は大好きな対談だが、制作時に関わっていたため、興味深いという感覚とはちょっと違う。

(おわり)


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まちへのラブレター: 参加のデザインをめぐる往復書簡