【環境デザイン学科】公開特別トークイベント 『原発と環境デザイン』

 京都造形芸術大学で行われた公開特別トークイベントを聞いてきた。

 一番興味深かったのは竹内さんが紹介されたムカヒ・ウガンダ大統領のリオ会議スピーチだ。いま、世界で注目されているそうだが、その最後に、「発展は人類に幸福をもたらすものでなければなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友だちを持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです」という言葉があった。

 7月1日のブログで僕は『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは僕たちは幸せになれないのでしょうか?』について、「「お金を儲ける」が「友を儲ける」「子を儲ける」と共鳴するような文化、社会・経済がいま求められている」と書いた。
 同じようなことをムカヒ大統領が言われ、世界で注目されていると聞くと、なんとなく嬉しくなる。

 ところで会は報告が目一杯で残りが10分になってしまい、会場との議論がほとんどなかったのは残念だった。
 また講師の先生たちは脱原発に前のめりだったが、学生さん達はどう思ったのだろう。
 竹内さんは原発問題は「イデオロギー」の問題ではなく、「安全を巡る」問題だと強調されていたが、どんな危険までは覚悟するかは価値観の問題だと思う。「絶対にこれが正しい」という回答はおそらくないだろう。

 ただ、捲土重来を期し原発推進を選択しても、エネルギー使い放題の核燃料サイクルが完成する日は遠い。
 だから環境デザインの技術者(の卵)として、原発に大きく頼ることなく化石エネルギー使用の削減に挑まなければならない、ということは間違いない。
 それには、長谷川羽衣子さんが節電所というコンセプトで紹介されていたように、エネルギー効率を高めるのが早道だろう。
 竹内さんは日本の住宅は暖房エネルギーの9割を捨ててしまっている。ちゃんと建てれば京都でも暖房ゼロでも快適に暮らせる家は出来ると強調されていた。また廣瀬俊介さんは、木造住宅と林業の再生による地域の復興の可能性まで言及されていた。

 そういう事は昔から一部では言われてきたが、あまり普及しなかった。政策の問題ももちろん大きいが、正直、コストもふくめ、うまくデザインできる人が少なかったと思う。
 ここに、チャレンジする人が出てきて欲しい。

(おわり)


【イベント概要】
・日時:2012年7月30日(月)18:00開始
・会場:京都造形芸術大学人間館NA302教室(聴講無料)
<ゲスト>
・竹内昌義(建築家・東北芸術工科大学教授)、
・廣瀬俊介(ランドスケイプデザイナー・東北芸術工科大学准教授)
・長谷川羽衣子(「緑」の京都・準備会共同世話人
<コーディネーター>
・小野暁彦(京都造形芸術大学准教授)
・佐々木葉二(京都造形芸術大学教授)


○関連図書
原発と建築家: 僕たちは何を設計できるのか。再生可能エネルギーの未来、新しい時代の建築を考えた。

藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?