茶谷幸治『「まち歩き」をしかける〜コミュニティ・ツーリズムの手ほどき』

 これは『まち歩きが観光を変える』を書いて下さった茶谷幸治さんの新刊だ。
 前著は長崎さるく博のドキュメントだが、その後、大阪あそ歩のプロデューサーをされた経験も踏まえて書かれたまち歩きの入門書である。

 驚くのは「まち歩き」への愛情と拘りの深さ。
 とりわけ「2 「まち歩き」の考え方」にある「見えているものを、よく見る」「見えていないものを、見る」、そして「まちの時間をつかみとる」は至言だろう。僕もまち歩きが好きだが、とてもそんな境地には達しない。

 ところで本書はサブタイトルにコミュニティ・ツーリズムを使った。コミュニティ・ツーリズムの決定版という謳い文句も使わせてもらった。
 もちろんまち歩きがコミュニティ・ツーリズムの全てではないことは承知している。だけど「1 いま、なぜ「まち歩き」なのか」の冒頭にある「いまこそ、まちとの関係修復を」という節を読んで頂ければ、その心は分かって頂けるのではないかと思う。
 茶谷さんはその節の最後に「いまが、まちとの関係修復を図る絶好の機会だと、私は思います。そして「まち歩き」という行為によって、あなたとあなたのまちとの間のより親密な関係を回復させることができるのではないか、このような希望を抱きながら、私は「まち歩き」を考えるようになりました」と書いている。
 もちろんまち歩きに集客効果を期待して取り組むことも良いのだが、根底にはこの考えがあることを知って欲しい。

(おわり)


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「まち歩き」をしかける: コミュニティ・ツーリズムの手ほどき