本の紹介

椎川忍『地域に飛び出す公務員』(2)

頑張っている緑のふるさと協力隊 もう一つ、民間のNPO法人地球緑化センターが20年前からはじめて大きな成果をあげたという「緑のふるさと協力隊」についても紹介しておこう。 農山村に希望者を1年間派遣するという制度だが、生活費の支給は月5万円程度と…

椎川忍『地域に飛び出す公務員』(1)

椎川さんの地方への拘り 昨年、『緑の分権改革』をお書き頂いた椎川さんが松江の今井書店から出された本。 今井書店は「本の学校」を昔から支えてきた書店で、主催していた「大山緑陰シンポジウム」は一時期、出版界でも注目されていた。僕も参加していた「…

『空き家・空きビルの福祉転用〜地域資源のコンバージョン』

9月に出した新刊。実は、この本、建築学会の大会に間に合わせるために、お盆の最中にもカバーの写真をめぐって右往左往していた。というのは、カバーに使っているデーセンターモモの家の写真の採否をめぐって、社内で異論が出て、著者の方々にも大変迷惑を…

『100円商店街・バル・まちゼミ〜お店が儲かるまちづくり』

長坂泰之編著、齋藤一成・綾野昌幸・松井洋一郎・石上僚・尾崎弘和著による「商店街活性化・三種の神器の真髄を第一人者が大公開」という本が先月出版できた。企画・編集はスタッフの岩崎君だ。 「100円商店街」は想像をはるかに超える集客力で賑わいを作る…

トム・ピーターズ『サラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ! 』

山崎亮さんが乾久美子さんとの講演会で紹介していた本だ。彼がどんなビジネス書を読んでいるのか、気に入っているのか知りたくて買ってみた。 たしかに、なかなか面白い。山崎さんの仕事スタイルにも結構使われているように思う。これは拾い物だった。 ただ…

過疎地域の戦略

鳥取大学が自治体と連携し、全学的に取り組んだ「鳥取大学持続的過疎社会形成研究プロジェクト」の成果をまとめた本。 鳥取県知事だった片山善博さんが、「過疎地域で先駆的な取り組みをしている鳥取県の現場でのさまざまな実践を紹介しつつ、今後の可能性に…

『田舎の宝を掘り起こせ〜農村起業成功の10か条』

この本はえがおつなげての曽根原久司さんと、えがおつなげての編で、杉本淳さんと矢崎栄司さんが書かれたものだ。 狙いは農村起業の手引き書。「えがお大学院」という起業家支援事業に参加し、起業した45人を紹介するとともに、とくに16人をとりあげてタ…

金丸弘美『幸福な田舎のつくり方』 読んでいると心が温かくなって気持ちが前向きになる例ばかり

『田舎力』を書かれた金丸さんにスタッフの宮本がアタックしてものにした本だ。 『県庁おもてなし課』の巻末対談にも参加されていて、その繋がりからか、帯には有川浩さんが「この一冊で観光小説が何本も書けそうです」という推薦を寄せて下さっている。 「…

山崎亮『コミュニティデザインの時代』

山崎さんの『コミュニティデザイン』に続く単著。 『コミュニティデザイン』が彼が取り組んできたプロジェクトを軸に、彼の考え方と技の発展を辿る本だとすると、こちらは「コミュニティデザイン」をざっくりと整理して述べた本だ。 僕たちの本を含めて共著…

リンダ・グラットン『ワーク・シフト』

孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>という触れ込みで、今売れている本だ。400ページを超えて上製で2100円と抑えた価格だし、読みやすい。その点は凄い。 ただ、著者も書いているが、すでにいろいろ言われていることのパッチワークで…

小熊英二『社会を変えるには』

これはまちづくり関係者にも是非読んで欲しい本だ。 本の焦点は「デモ」だが、「デモ」が抱える問題、可能性は、まちづくりで盛んに言われてきた「参加」「参画」に通じている。ともに、選挙で選ばれた首長さんや議員さんにお任せするだけでは足りない、それ…

孫崎亨『戦後史の正体』

アマゾンでコミックなどを除くと総合1位だったので、買ってみた。 元外務省・国際情報局長が書いた、米国からの圧力を軸に戦後70年を読み解いた本とのふれこみだ。 書かれていることは、そんなに目新しいことばかりではない。 たとえば、負けたとたんに、…

ダグラス・スミス『経済成長がなければ私たちは豊になれないのだろうか』

山崎亮さんと藻谷浩介さんの『経済成長がなければ、僕たちは幸せになれないのか』という本を紹介したが、この本のなかで、山崎さんが対談のヒントとなった本として紹介された本だ。 ただ、普通の本じゃない。 戦後の経済学を見事に「ちゃぶ台返し」してしま…

山内道雄『離島発 生き残るための10の戦略』

海士町の町長さん、山内道雄さんが2007年に書かれた本。 帯には「財政破綻前夜、生き残りに向けて立ち上がった離島の町。難問解決のヒントがここにある」と書かれている。 実際、島丸ごとブランド化など果敢な取り組みが書かれているが、一番気になったのは…

三浦しをん『舟を編む』、大崎梢『プリティが多すぎる』

どちらも編集者が主人公の物語。 三浦しをん『舟を編む』は売れているとは聞いていたが、アマゾンを見に行くと堂々1位だった。4月10日に本屋大賞をとった影響もあるのだろうが、凄い売れ行きだ。ちなみにジュンク堂系列の売れ行きをみてみると、この1ヶ月…

中川真+編集部『これからのアートマネジメント〜ソーシャルシェアへの道』

アートでソーシャルシェアって何だろうと思って買ってみた。 中川真+編集部による序文では、現在のアートとアートマネジメントには、社会問題になりやすい場から、一見何事もない日常の場まで、ともにシェアする新しい公共空間(公共圏)をつくること、また…

森巣博『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』

日本の現状を糞味噌にけなした本。 とりわけ大手マスコミの堕落にたいして厳しい。 「利潤の私益化、費用の社会化」が新自由主義思想のキモという断定は、スッキリしていて気持ちが良い。だが、読んでいて明るい気分にはなれない。もう、ほとんど絶望という…

黒野伸一『限界集落株式会社』

帯には逆転満塁ホームランの地域活性エンターテイメントとうたっている。実際、サクセス&ラブストリーで、まあ、堅いことを考えなければ、楽しめる本だ。 ビックリしたのは、次の場面。 就農研修にきた千秋が聞く。 「だけどこの村、いずれ本当に消滅しちゃ…

竹内昌義『原発と建築家』、内田雄造追悼文集『ゆっくりとラジカルに』

3.11から1年がたち、原発事故の強烈な印象もだんだん薄れてきた。 昔、黒澤明の映画※1を見て、きっとこうなるんだろうと恐れていた破局と比べると、ずっと影響が少なく、人が目の前でバタバタ死ぬという事態にはなっていない。ひょっとすると首都圏3000万人…

森巣博『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』

日本の現状を糞味噌にけなした本。 とりわけ大手マスコミの堕落にたいして厳しい。 「利潤の私益化、費用の社会化」が新自由主義思想のキモという断定は、スッキリしていて気持ちが良い。だが、読んでいて明るい気分にはなれない。もう、ほとんど絶望という…

水野和夫・萱野稔人『超マクロ展望〜世界経済の真実』

藻谷浩介さんが人口減少を根拠に日本のデフレの不可避性を説いているとすれば、こちらは500年という長いスパンのなかで、世界全体のデフレ、成長の終焉を説いている本だ。 水野さんによると、70年頃から、資本主義は生産で稼ぐことができなくなり、金融資…

『都市・まちづくり学入門』『いま、都市をつくる仕事』クロストーク3

『いま、都市をつくる仕事』での議論 ところで、『いま、都市をつくる仕事』は1章が「都市へのアプローチ」と銘打って、新しい仕事の仕方をしている10人を紹介し、2章では「ひろがる仕事のかたち」と銘打って「企業系」「政治・行政系」「研究系」「NPO…

『都市・まちづくり学入門』『いま、都市をつくる仕事』クロストーク2

『都市・まちづくり学入門』での議論 では、どうするのか。 『都市・まちづくり学入門』では、枠組みの議論は深めている。 たとえば松村暢彦さんは「8章 まちづくりを担う市民」のなかで、似田貝さんの「都市政策と「公共性」をめぐる住民諸活動」という図…

『都市・まちづくり学入門』『いま、都市をつくる仕事』クロストーク 1

「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk この二つの本は、都市計画学会関西支部の20周年事業のなかで書かれたものだ。だが、著者同士も知らないなかでもないのに、お互い何を考えているのか話すこともあまりなかったね、と柴田さんが山崎さんに話した…

滝川薫編集、村上敦、池田憲昭、田代かおる、近江まどか著『100%再生可能〜欧州のエネルギー自立地域』

この本は、福島原発事故の後、お付き合いのあった欧州在住の日本人ジャーナリストからスタッフの宮本にお話があり実現した。「「フクシマ」という重く深刻な運命的打撃を受け、それを背負って生きていかなければならない祖国に、新しい夢とビジョンを与えた…

鈴木謙介『サブカル・ニッポンの新自由主義』

小泉さんが人気が高かったころ、知り合いのバイトの子が「改革大賛成!」「労働力の自由化、是非やるべき」というのを聞いて、とても奇異に感じたことがある。 言われていた労働力の流動化は、どう考えても労働市場で弱い立場にある彼らを圧迫するし、彼らを…

橋本健二『階級都市』

これまで東京は実に羨ましい街だと思っていた。 なぜなら、超高層が林立し、繁華街には人があふれているだけではなく、下北沢のような若者文化を肌で感じられる街もあるし、谷根千のような趣のある街もある。なんでも揃っていて、ずるいぞ、コラって感じだ。…

駒崎弘樹『「社会を変える」を仕事にする』

この本は良い。元気が出てくる本だ。 何と言っても、行き当たりばったりなところが良い。また聖人ぶらず若干露悪的に下ネタ大好きな自分をさらけ出すところも良い。 彼は病児保育という病気になったときに子供を預かる事業を立ち上げている。とういのも、子…

『何が日本の経済成長を止めたのか?』『小商いのすすめ』

『何が日本の経済成長を止めたのか?』というNIRAのレポートをちらっと見た。 それによると、成長が止まったのは、 1)日本が経済的にアメリカなどの先進国に追いつくようになってきた、 2)金融のグローバル化と変動相場制への移行は、輸出指向型成長の持…

星丹二『ピンピンコロリの法則〜お出かけ好きは長寿の秘訣』

健康長寿の秘訣を書いた本だが、まちづくりにも関係する話題があったので紹介しよう。 前提として健康長寿に医療が貢献する割合は1割程度というのが著者の主張だ。 収入も大切だが、世界的には一人当たり40万円以上になると大した差はなくなり、日本では1…