まちづくり

世古一穂『コミュニティ・レストラン』(2)

コミュニティ・カフェとの違い なんでもありのコミュニティ・カフェ コミレスに似ている運動にコミュニティ・カフェがある。 長寿社会文化協会(WAC)が力を入れている運動で、WAC編の『コミュニティ・カフェを作ろう』(学陽書房、2007)によると、「『人と…

世古一穂『コミュニティ・レストラン』(1)

世古一穂さんのコミュニティレストランの講演が、家の近くのYWCAであった。 その後、世古さんの『コミュニティ・レストラン』(日本評論社、2007)も読んだので、併せて紹介しよう。 コミュニティ・レストランとは コミュニティ・レストラン、略してコミレス…

平山洋介『不完全都市〜神戸・ニューヨーク・ベルリン』

山崎義人さんと嘉名光市さんが 季刊まちづくり26号の読書会で報告されている都市の放棄地については、平山洋介さんが『不完全都市―神戸・ニューヨーク・ベルリン(学芸出版社、2003)』で詳しく論じている。 ニューヨークの放棄住宅 この本によると、ニュー…

林直樹、齋藤晋編著『撤退の農村計画』(3)

跡地管理の方法 撤退した後、あるいは結果的に集落が消えてしまった後、その土地をどう管理するかが大問題だ。 どんな問題があり、どんな対策があるのか、『撤退の農村計画』から幾つか紹介しよう。 放棄地、所有者不明の土地 都市計画の改革の議論でも、管…

林直樹、齋藤晋編著『撤退の農村計画』(2)

撤退の農村計画 集落に撤退の検討を薦める、この言いにくい問題に正面から立ち向かったのが林直樹さんほかによる『撤退の農村計画』だ。 もちろん一つでも集落の消滅を減らすように努力することに反対する本ではない。 だが人口減少と高齢化という圧倒的な現…

林直樹、齋藤晋編著『撤退の農村計画』(1)

国土交通省と総務省の2007年の調査によれば、10年以内に消滅の可能性がある集落は全国で423、「いずれ消滅」を含めると2643にのぼるという(林直樹、齋藤晋編著『撤退の農村計画』、p11)。 国土交通省の調査では過疎地の集落は6万ちょっとなので、わずか4…

宇沢弘文『「成田」とは何か』(2)

住民が大切にしたもの 第一回公開シンポジウムでの石毛博道さんの意見発表は心を打つ。 「つねに指摘してきたように、運輸省と関係住民、関係市町村の公開討論の場は、空港位置決定のときに、当然、開かれるべきであったからです」。 「もし1966年にこのよう…

特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その3

地域資源が生み出すブランド 重要なのは「その地域がもつ地域資源(自然、歴史・文化、地場産業等)から生み出されるもの」という考え方だと思う。 もちろん亀山ブランドの液晶テレビのように、その地域が持っていた地域資源とはつながりが弱い物もある。い…

特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その2

地域ブランドの捉え方 未定稿なので、詳細に引用しての紹介はできないし、ひょっとすると大きく変わるかもしれないが、佐々木一成さんの『地域ブランドと魅力あるまちづくり』は次の5章からなる予定だ。そして各章各節を裏付ける約40の事例が適宜紹介されて…

特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その1

いよいよ脱稿! 『観光振興と魅力あるまちづくり』の佐々木一成さんにお願いしていた『地域ブランドと魅力あるまちづくり』が、脱稿した。 お願いしたのは2年半ほど前。当時、すでにブームだったとはいえ、地域ブランド本は、関満博さんの本や、本当の専門…

『季刊まちづくり28号』発行間近(2)

景観法を生かした最近の取り組みから何を学ぶか 芦屋をはじめ、自治体の積極的な取り組みがはじまっている。 そのなかで一番残念なのは、事業者や設計者が明示的な基準を求め、「基準に合っていれば良いんでしょ」という姿勢に留まっていることだと小浦久子…

『季刊まちづくり28号』発行間近(1)

8月初旬ですが、八甫谷氏が制作・編集し、学芸が発売している『季刊まちづくり』9月1日号の校正を読みました。 もう印刷は終わり、9月1日には発売です。 ところで季刊まちづくり、来年の春で30号ですが、このままでは31号以降の継続が難しくなっていま…

藤井聡『正々堂々と「公共事業の雇用創出効果」を論ぜよ』(2)

失われた夢 どうして大衆は道路をはじめとした公共事業に不信感を持つようになったのだろうか。 政治との癒着、談合、環境破壊などなど枚挙に暇がないが、藤井さんも指摘されているように、バブル時代に、アメリカの要請に応えてやたらと公共事業を膨張させ…

藤井聡『正々堂々と「公共事業の雇用創出効果」を論ぜよ』(1)

コンパクトシティ 著者の藤井聡さんは現在、京都大学工学部で土木計画、とくに交通計画を教えておられる。 交通図書賞を受賞された『モビリティ・マネジメント入門』は東京工業大学におられた頃に、僕が担当して書いて頂いた本だ。 そのとき、最初にいただい…

高松平蔵さんのセミナー『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(2)

ドイツの政治と官僚事情 ドイツは政治家と官僚の役割が日本と随分違う。 小さな街でも、大臣に相当する政治家のポストがあり、たとえば文化大臣がいる。その役目は「まちの戦略として文化をどう扱うか」を示すことだ。 たいして官僚は専門家だという。たとえ…

高松平蔵さんのセミナー『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(1)

8月2日の高松さんの講演会も盛況でした。 おいでいただいた皆さん、有り難う。 正式な記録は下記にあるので見てください。ここでは興味深かったことをいくつか取り上げて紹介します。 ○担当編集者による正式記録 http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1008ta…

イタリア世界遺産物語〜人びとが愛したスローなまちづくり

セミナー無事終了 8月5日、宗田好史さんのセミナーが無事に終わった。 最初は申し込みが少なく、どうなるのかと心配したが、ボチボチ、ボチボチと申し込みが増え、最後は50人を超えたうえ、キャンセルが少なく、参加者数も50人を超えた。 来てくださっ…

コミュニティ・ビジネスとは(特報(3))

さて、昨日、イギリスの例をあげての定義では日本に馴染まないと言ったが、なぜか。 それは、もっとも肝心な「コミュニティが設立・所有し、運営を行う経済組織」に相当する考えが日本にはないからだ。 石井和平氏はスコットランドでこの考え方が成り立つの…

コミュニティ・ビジネスを知ったのは(特報(2))

僕がコミュニティ・ビジネスという言葉に出会ったのは『都市のリ・デザイン』という本だ。その第2章で加藤恵正さんが「エコノミー&コミュニティ/ブランチ経済から地域に根ざした参加の経済へ」というタイトルで書かれていた。 当時、支店経済の再編成が話…

『〈新版〉コミュニティ・ビジネス』(特報(1))

脱稿間近! 細内信孝さんの『〈新版〉コミュニティ・ビジネス』の草稿を読んだ。 かなり良くまとまっているので、もうすぐ脱稿だ。秋には皆さんのお手元にお届けすることができる。期待してください。 ところで旧著『コミュニティ・ビジネス』は1999年に中央…

『まちづくりコーディネーター』セミナー開催(2)

まちづくりコーディネーターとは何か 昨今、住民主体のまちづくりへの期待が高い。地域のことは地域の人々が主体的に決めていくべきという美しい話と、お金も人も足りないのでドブ板行政をいつまでも続けられないという行政側の現実があるのだろう。 しかし…

『まちづくりコーディネーター』セミナー開催(1)

セミナー開催 本の出版1周年記念と、販売梃子入れを兼ねてセミナーを開催することにした。 編者のリムボンさんは快く引き受けてくれたのだが、出てきた趣旨文を見ると、「……喧嘩、売ります!……」とある。 なんだ、喧嘩だって!?、見に行かなきゃ!! 詳し…

観光のユニバーサルデザイン京都セミナー・報告2

ルーブル美術館のエントランス 伊澤さんは今回もルーブルのピラミッドをべた褒めにしていた。 本のカバーにも使っているぐらいだから、とっても良い例だと本書では主張しているのだが、本当にそうだろうか。 たとえば東本願寺の前の広場に、あんなものができ…

観光のユニバーサルデザイン京都セミナー・報告1

7月12日に観光の「ユニバーサルデザイン」京都セミナーが無事に終わった。 20人きてくれるかどうか、と心配したが、天候不順にも拘わらず、50名以上の方に参加頂き、会場の京都景観・まちづくりセンターのワークショップルームが満杯になった。 本当に有り難…

室田昌子「ドイツの地域再生戦略」セミナーを終えて

室田昌子さんの「ドイツの地域再生戦略 コミュニティマネージメント」セミナーが50名の参加を得て無事に終わった。一部交通機関が不通になるなど、天候不順のなか足を運んでくれた皆さんに感謝。帰りの足が心配で直前キャンセルが多かった2次会も、当日にな…

久繁哲之介『地域再生の罠』に反論する(4)街なかの農産物加工品直売所

2つの提案について そのほかにも、いろいろ問題点の多い本だが、文句をいうことはこのぐらいにして、久繁さんの提案を前向きに考えてみよう。 一つは、農産物「加工品」直売所を「憩いの場」にするというもの。 二つ目は、町なかの空き地、空き施設をつかっ…

久繁哲之介『地域再生の罠』に反論する(3)富山市のコンパクトシティ政策は失敗か

富山市も繁華街は著しく衰退 久繁さんによると 富山市は前例依存体質で、中心市街地活性化基本計画やコンパクトシティにいち早く飛びついたが(p154)、繁華街は著しく衰退しており、駅前も単純ににぎわいがあるとは言い難い。繁華街には廃墟ビル、空き地、…

久繁哲之介『地域再生の罠』に反論する(2)ぱてぃお大門は失敗か

ぱてぃお大門に閑古鳥? 最初に叩かれている宇都宮。次が松江の天神商店街。幸か不幸か、僕の本で紹介したした記憶はない。福島、岐阜も記憶にないが、長野と富山は、何度か紹介した。 まず、ぱてぃお大門。 09年2月12日の12時から30分間、ぱてぉい大門を訪…

久繁哲之介『地域再生の罠』に反論する(1)土建工学者って誰?

ツイッターでyami_kenさんに薦められて『地域再生の罠』を読んだ。 主張には共感できるところもある本なのだが、まず敵をつくって一方的に叩くという姿勢には辟易する。 その敵だが嘘っぱちの成功事例を喧伝し、無意味な箱物を乱造する土建工学者である。 こ…

京都市基本計画第一次案

パブコメくん 6月に、自宅そばのお店にランチを食べにいったら、玄関に京都市基本計画第一次案への意見募集のパンフレットがあった。 「これもらって良い? なんで置いてあるの?」 と聞くと、店のお嬢さんは 「お米の宣伝なんでしょうね。京都市に勤めてい…