特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その3
地域資源が生み出すブランド
重要なのは「その地域がもつ地域資源(自然、歴史・文化、地場産業等)から生み出されるもの」という考え方だと思う。
もちろん亀山ブランドの液晶テレビのように、その地域が持っていた地域資源とはつながりが弱い物もある。いくら亀山ブランドの液晶テレビのファンになっても、だから亀山に旅行にいこうという人も少ないだろうし、亀山の他の産物に関心をもつ人も少ないだろう。
「ももいちご」も同様だと思う。徳島佐那河内村の特産とのことだが、栽培農家が30戸しかないということが強調されているが、村のイメージは打ち出されていない。現地に行っても「ももいちご」が食べられるのか、食べられないのか、役場のHPでは判然とせず、農協に問い合わせよと書いてある。これでは行く気になりにくい。
しかし多くの地域ブランド産品は、その地域のイメージに支えられているし、またその地域のイメージを支えている。だから「賀茂なす」のファンになった人は、他の京野菜にも関心を持ってくれるだろうし、ひょっとすると京料理を食べに行こうと思うかもしれない。
ところが上賀茂にきてみたら、がっかりの風景だったらどう思うか。
誰も京野菜なんて食べていなかったらどうか。
僕ならがっかりする。
京野菜は、京都の歴史や文化を大切にしている京都人が食べているという物語があるから、京都の文化の輝きを背負える。そこに、いかにも美味しそうな野菜をつくっている風景があって、始めて美味しく思える。
コモディティ品というのだろうか、世界のどこでも作れて、どこでも売られている普通品では、美味しいところは市場にとられてしまう。ブランドづくりが「売れ続けるための仕組みづくり」であるなら、その背後にその地域ならではの地域資源(自然、歴史・文化、地場産業等)を持っていることは強みだ。
とりわけ「特産物ブランド」と「文化・環境ブランド」の接点にある地場産業は重要だと思う。
また、環境配慮が声高に言われる今、環境政策に裏打ちされた「文化・環境ブランド」を持つ都市は魅力だろう。
本書では取り上げられていないが、京都はCOP3の開催地となったことで、とても得をしている。ヨーロッパではKyotoといえば京都議定書、環境対策に熱心な都市という連想が働くと、京都市は吹聴している。
そして京都の経済界は、京都の企業であることに誇りを持っていると聞く。
やや楽天的にすぎるかもしれないが、地域ブランドは、景観かメシの種かという従来の枠組み、思考を飛び越える視点となり、また切っ掛けともなりうるのではないか。
原稿を読んで、そのように感じた。
果たして本書の魅力をうまく説明できたかどうか心許ないが、この本が地域の底力を高めることに少しでも役立てばと思う。そのためには、まず出さなければ。