特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その2

地域ブランドの捉え方

 未定稿なので、詳細に引用しての紹介はできないし、ひょっとすると大きく変わるかもしれないが、佐々木一成さんの『地域ブランドと魅力あるまちづくり』は次の5章からなる予定だ。そして各章各節を裏付ける約40の事例が適宜紹介されている。


 1章 地域ブランドとは何か
 2章 いま、なぜ地域ブランドなのか
 3章 「特産物(サービス)ブランド」への取り組み
 4章 「文化・環境ブランド」への取り組み
 5章 京都ブランドはなぜ強い(優れた統合ブランドとは)
 6章 地域ブランドの創造と強化


 本書ではまず「地域ブランドとは、特産物(またはサービス)や文化・環境などの個別ブランドと、これらを一体的に束ねる統合ブランドから成り立つ」とし、個別ブランドと統合ブランドが相互に影響し、強め合う(あるいは弱め合う)関係にあると主張している。


 たとえば京都の一番の観光土産である漬け物で言えば、京漬け物というブランドが、実は、京都の1200年の歴史に育まれた食文化といった京都の物語(統合ブランド)に支えられていること、逆に京漬け物の美味しさが、京漬け物をこよなく愛する奥ゆかしい京都人の京都という物語(統合ブランド)を強めているということだ。





 さて、その個別ブランドは、「その地域がもつ地域資源(自然、歴史・文化、地場産業等)から生み出されるもの」で、具体的には「特産物(サービス)ブランド」「文化・環境ブランド」「観光ブランド」の三つの領域からなるとしている。
 そしてそれぞれが、「買いたい、使いたい消費者」「暮らしたい定住者」「訪れたい旅行者」に対応していると言う。


 ただ、本書の目次からも明らかなように、観光ブランドは本書ではあまり重要視していない。なぜなら、買いたい物があるから、そこの暮らしや文化が素敵に見えるから、旅行者は訪ねたいと思うからだ。


 もちろんディズニーランドやシーガイヤのような新しい観光資源をつくることも可能だろう。
 しかし、それはあまりにリスキーだ。
 また、今、増えている観光資源は、たとえば石見銀山秋葉原や道頓堀のように、生活と生業の総体としての文化的景観であることが多い。
 とすれば、結局のところ、そこに住む住民が大切にしている文化・環境、そして育てている物やサービスこそが、観光資源の候補なのだ。


 その資源をどう磨いて魅力としていくか、どう売り出していくかは、敷田さんたちの本、それに6月30日に紹介した十代田朗さんや内田純一たちの『観光まちづくりとマーケティング』本に任せ、本書では、その基盤となる「特産物(サービス)ブランド」「文化・環境ブランド」に焦点を当てている。

続く


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・敷田麻実、内田純一、森重昌之編著『観光の地域ブランディング―交流によるまちづくりのしくみ


・佐々木一成『観光振興と魅力あるまちづくり―地域ツーリズムの展望