石井淳蔵・高橋一夫編「観光のビジネスモデル〜利益を生み出す仕組みを考える〜」(2)

 昨日は、人手をかけることの重要性の指摘だった。
 今日紹介する経験価値も、多くの場合、人手をかけることで提供できる物だ。

経験価値

 経験価値がこれからの流れだと原稿に書かれていた。
 大量生産大量消費が飽きられ、単に所有することでは満足が得られなくなり、「心地良い経験」が消費者を引きつけるのだという。


 そうなると旅行はとても有利だ。旅行は非日常体験だから、旅行の雰囲気を盛り上げる体験を他業界とタイアップして提供すると、相乗効果が期待される。
 たとえば旅行と新型車の試乗を組み合わせたり、化粧品やエステ業界とのタイアップなど、旅行の非日常性を強めると同時に、商品の魅力を効果的にアピールするといった手法が効果を上げているそうだ。


 では、観光まちづくりではどうか。


 体験プログラムは経験価値そのものだろう。
 随分広がっているが、見合うだけの価格を付けられないで困っているところも多いのではないか。
 趣味で、あるいはまちづくりの一環として、無料ないし超低価格で提供されている場合も多いので、なおさら高くできないという面もあるように思う。


 しかし、経験価値が求められる流れは大きくなる一方だと思う。
 先日紹介した『愛国消費』でも、自分なりに見つけた日本に誇りをもちたいという動向が紹介されていた。


 だが、いくら一流の文化遺産でも、眺めているだけでは自らの誇りとすることは難しい。自分がそこに関わってこそ、誇りにしやすい。たとえ観客であっても、その文化を支えているという意識が持てて初めて自らの文化と誇れるのではないか。


 詳しくは、宗田好史氏が『創造都市のための観光振興』で書いているが、いまや観光客も文化の担い手、当事者意識が持てることが鍵だという。


 もし体験プログラムで観光客に愛着や、その地域の文化に参加しているという誇りを持ってもらえたら、応援団になってもらうこともできるのではないか。 
 そこまでいかなくても、特産品の販売につなげることも出来そうだ。


 そんな例として道の駅とみうらを中心とした試みも『観光のビジネスモデル』では紹介されている。
 多人数を集客する体験プログラムを手配するとみうらでも、その手数料だけでは成り立たない。それよりも特産品の売上げで利益を上げているという。


 まちづくり重視の場合、儲かる物とそうでもないものをうまく組み合わせ、ミッションを支えていく仕組みが必要だ。

(おわり)


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