佐々木一成『地域ブランドと魅力あるまちづくり』いよいよ出版(1)

本の狙い


 地域ブランド本は数ある中で、まちづくりとの相乗効果に着目して書かれた初めての本だ。


 その概要は草稿が上がった8月末に「特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』」で紹介した。


 そのポイントを繰り返せば、その地域がもつ地域資源(自然、歴史・文化、地場産業等)から生み出されるブランドには、図のように「特産物(サービス)ブランド」「文化・環境ブランド」「観光ブランド」の三つの領域があり、それぞれが、「買いたい、使いたい消費者」「暮らしたい定住者」「訪れたい旅行者」に対応しているのだが、図のようにそれらが統合されている場合、強く、そして持続するというのが本書の主張だ。





 たとえば京都の一番の観光土産である漬け物で言えば、京漬け物という特産品ブランドが、実は、京都の1200年の歴史に育まれた食文化やその背景としての京都らしい風景といった京都の物語(統合ブランド)に支えられていること、逆に京漬け物の美味しさが、京漬け物をこよなく愛する奥ゆかしい京都人の京都流の生活という物語(統合ブランド)を強めているということだ。


 そのような統合ブランドをどう育て、維持していくのか。
 佐々木さんは特に文化・環境ブランドへの取り組みが大切だと強調されている。


 特産品はなるほど即効性がある。売上げもあがるし、観光客も来てくれる。だいいち、お金もたいしてかからない。
 たいして、まちづくりは大変だ。景観にしても、大変な努力がいるし、時間もかかる。そのうえ人々の自主的な協力なくしてはなしえないし、電柱を地下に埋めるだけでも、何億というお金がかかる。まして文化となれば、どうやって守り、育てれば良いのかも、定式はない。人びとが大切に思わない限り残らない。


 だが、簡単にできるということは、他でも出来てしまうということだし、歴史や文化にこだわりのないファンは、新しいものができれば、そちらに行ってしまう。だいいち、観光業や飲食業が潤うだけでは、地域振興としてはパワー不足だろう。


 逆に言えば、空間に関わっている人たちも、それをブランドにいかにつなげるか、地域振興にいかにつなげるかを、もっと真剣に考えれば可能性は広がるということでもある。
 まちづくりにしても、観光振興にしても、地域ブランドにしても、地域を持続させたいという願いは変わらない。もっと相互につながるべきだと思うが、いかがだろうか。


続く





地域ブランドと魅力あるまちづくり・予定目次



序章 地域ブランドとは何か

 1 積極化する地域ブランドへの取り組み

 2 地域ブランドとは何か

 3 地域ブランドの典型的事例

 4 地域ブランド確立に必要な多面的取り組み

 


第1章 いま、なぜ地域ブランドなのか


第1節 地域経済の再生・活性化

 1 避けられない地域経済の構造転換

 2 地域を襲う人口減・高齢化と財政難

 3 事例「綾部市」(京都府

 4 事例「夕張市」(北海道)

 5 地域再生地域ブランドの活用から

 ・コラム ご当地水道水のブランド化


第2節 地方分権市町村合併の進展

 1 地域主権の時代へ

 2 進む市町村合併の動き

 3 地域振興のキーワードは「多様性」と「個性」

 4 事例「篠山市」(兵庫県

 5 事例「川上村」(長野県)

 6 地域経営の鍵となる地域ブランド


第3節 成熟化する消費者行動

 1 「消費の二極化」とは

 2 社会の成熟化と消費者の価値志向

 3 「生活の質」を求め始めた消費者

 4 事例「通販オンラインショップ まち楽」

 5 事例「自治体アンテナショップ」


第4節 観光立国、地域ツーリズムへの対応

 1 観光振興は地域の魅力づくり

 2 大きく変化する旅行市場

 3 「発地型観光」から「着地型観光」へ

 4 事例「ワインツーリズムと近代化産業遺産」

     (山梨県甲州市勝沼町

 5 事例「ロケ誘致とフィルムツーリズム」(山形県庄内地方

 6 事例「ヘルスツーリズムとフラオンパク」

     (福島県いわき湯本温泉郷)

 7 地域ツーリズムによる観光ブランド構築

 ・コラム「ももいちご」にみる地域性(徳島県佐那河内村

 


第2章「特産物(サービス)ブランド」への取り組み


第1節 地域団体商標

 1 地域団体商標制度とは

 2 地域団体商標制度の特徴

 3 出願と登録査定状況

 4 事例「関あじ」「関さば」(大分市

 5 事例「紀州備長炭」(和歌山県

 6 事例「静岡茶」(静岡県

 7 地域ブランドにおける商標権の役割


第2節 地域食品ブランド表示基準「本場の本物」

 1 「本場の本物」とは

 2 認定のプロセス

 3 認定の状況

 4 事例「小豆島ブランド」(香川県小豆島町、土庄町)

 5 事例「鹿児島の壺造り黒酢」(鹿児島県霧島市福山町

 6 品質を重視し訴求する「本場の本物」


第3節 酒類の産地ブランド保護

 1 地理的表示制度とは

 2 保護の内容

 3 事例「白山菊酒」(石川県白山市

 4 地理的表示制度の今後(清酒を中心に)

 5 事例「佐賀県原産地呼称管理制度」

 6 清酒復興に必要な文化・環境ブランド


第4節 「食」のブランド化

 1 ご当地グルメによる町おこし

 2 「食」による観光まちづくり

 3 事例「芋煮」(山形県

 4 事例「出石皿そば」(兵庫県豊岡市出石町

 5 事例「北の屋台」(北海道帯広市

 6 必要な空間構成と物語性

 ・コラム 増える緑提灯〜国産食材を増やす運動〜

       /ご当地プレート

 


第3章「文化・環境ブランド」への取り組み


第1節 創造都市

 1 創造都市とは

 2 日本における創造都市

 3 事例「金沢市」(石川県)

 4 事例「萩市」(山口県

 5 事例「沖縄市」(沖縄県

 6 文化・芸術資源の活用とブランド化


第2節 アートによる地域づくり

 1 アートは地域を再生する

 2 事例「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ

     (新潟県十日町市津南町

 3 事例「三河佐久島アートプラン21」(愛知県一色町

 4 事例「写真による町おこし」(北海道東川町)

 5 アートとブランド形成

 ・コラム ヘブンアーティスト(東京都の大道芸人公認制度)


第3節 景観形成

 1 失われた景観

 2 事例「門司港レトロ地区」(福岡県北九州市門司区

 3 景観法の制定

 4 事例「近江八幡市」(滋賀県

 5 重視され始めた文化的景観

 6 事例「小鹿田焼の里」(大分県日田市)

 7 事例「法善寺横丁」(大阪市中央区

 8 景観形成と文化・環境ブランド

 ・コラム 鞆の浦訴訟と景観利益


第4節 歴史まちづくり

 1 魅力ある歴史的町並み

 2 歴史的町並みの保存事業

 3 歴史まちづくり法

 4 事例「亀山市」(三重県

 5 事例「佐川町」(高知県

 6 文化財の総合的把握と歴史文化基本構想

 7 事例「日南市」(宮崎県)

 8 歴史まちづくりによるブランド力の向上


第5節 生物多様性保全

 1 生物多様性と地域の役割

 2 事例「コウノトリ舞う里づくり」(兵庫県豊岡市

 3 事例「銀座ミツバチプロジェクト」(東京都中央区

 4 事例「棚田を守る取り組み」(千葉県鴨川市ほか)

 5 生物多様性と地域のブランド化

 ・コラム クラゲ展示で世界一の加茂水族館


第6節 「日本で最も美しい村」連合

 1 「日本で最も美しい村」連合とは

 2 事例「美瑛町」(北海道)

 3 事例「小値賀町」(長崎県

 4 事例「小坂町」(秋田県

 5 連合の取り組みについて

 


終章 ブランドの統合化と創造


第1節 京都ブランドはなぜ強い(優れた統合ブランドとは)

 1 京都という地域性

 2 厚みのある特産物(サービス)ブランド

 3 景観規制と文化・環境ブランド

 4 良質で魅力に富む観光ブランド

 5 京都ブランドと水

 6 京都ブランドの強みと課題

 ・コラム 魅力づくりで巻き返す奈良ブランド


第2節 優れた地域ブランドを創造するには

 1 いかに統合ブランドを確立するか

 2 重要な「文化・環境ブランド」への取り組み

 3 多くの地域で構築可能な統合ブランド

 4 地域ブランドの確立に向けて

 5 地域ブランドのもう一つの課題(歴史的地名の消滅と復活)

 

 おわりに/主な参考文献/重要用語索引


セミナー

地域ブランドと魅力あるまちづくりin京都
 講師:佐々木一成 氏
 2011年3月4日(金曜日)/午後6時00分開場、6時30分から8時半頃まで
 場所:学芸出版社3階
 申込み http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1103sasaki/index.htm


地域ブランドと魅力あるまちづくりin東京
 講師:佐々木一成 氏
 2011年4月7日(木曜日)/午後6時00分開場、6時30分から8時半頃まで
 場所:市田邸(谷中)
 申込み http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1104sasa/index.htm

○脱稿時のブログ
特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その1
特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その2
特報・『地域ブランドと魅力あるまちづくり』その3
佐々木一成さんへのインタビュー


○アマゾンリンク



・佐々木一成『地域ブランドと魅力あるまちづくり―産業振興・地域おこしの新しいかたち


・佐々木一成『観光振興と魅力あるまちづくり―地域ツーリズムの展望


地域ブランド関連書
・十代田朗、山田雄一、内田純一、伊良皆啓、太田正隆、丹治朋子著『観光まちづくりのマーケティング


・敷田麻実、内田純一、森重昌之編著『観光の地域ブランディング―交流によるまちづくりのしくみ