京都市基本計画第一次案

パブコメくん

 6月に、自宅そばのお店にランチを食べにいったら、玄関に京都市基本計画第一次案への意見募集のパンフレットがあった。
 「これもらって良い? なんで置いてあるの?」
と聞くと、店のお嬢さんは
 「お米の宣伝なんでしょうね。京都市に勤めているお客さんが置いてくれって言って」
とのこと。
 なんでお米の宣伝と間違われるかというと、パブコメくんというキャラクターを全面に押しだし、裏面もお米の形を図案化しているからだ。
 親しみを持ってもらおうという気持ちは分かるが、伝えるべき事が伝わっているのだろうか?。

京都市基本計画とは

 ホームページを見ると、いろいろな資料が載っており、綺麗な小冊子も2種類作られているのだが、市民意見募集用冊子を見ても「ようするに、これは何なの?」と言うことがよく分からない。
 「今後10年の京都市の未来像と主要政策を明示する」ものとあるが、何に対してどれほどの拘束力があるのか、首長さんや、議員さんが「こんな、計画作った奴らはダメ」と交替になっても、新首長や議会も拘束されるのか、そもそも帰られないのかなど、基本的なことが書いていない。
 審議会が市民とともに案をつくって答申するのだそうだが、答申したあとどうなるのかも、分からない※。
 京都市が勝手に精神論をぶっているのか、予算の確保には計画に書かれていることが必要なのか、「あんたの生活にどう影響するよ!」というところを聞かせてくれないものだろうか。
 これは「自治法にいう総合計画だな」と分かる人しか相手にしていないようにも思えてしまう。
 (※さすがに、京都市基本計画第1次案(本冊)には議会の議決を経て策定予定と書いてあった。)

京都市基本計画に何が書いてあるか

 なかなか良いことがいっぱい書いてある。ほとんどケチの付けようがない。
 そこで、2001年〜2010年の計画と比べてみた。ちなみにこれが第一期、今、策定中のものは第二期にあたる。いずれも1999年策定の京都市基本構想(グランドビジョン)に基づくものだそうだ。
 眺めてみたのは第一期は前文。
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000035772.html
 第二期は意見募集用小冊子
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/cmsfiles/contents/0000080/80467/220521_1jian_ikenbosyu_all.pdf

「人権」という言葉の後退

 まず目立つのは「人権」という言葉が少なくなったこと。
 第一期の1節の1は男女共同参画に限らず、子ども、障害者、高齢者などの人権がうたわれ、特別施策としての同和対策事業の終了とその後の取り組みが挙げられていた。
 第二期では、「うるおい」分野のなかに人権・男女共同参画がうたわれてはいるが、その説明には「人権」は一言も出てこない。
 よく言えば「人権」をお題目のように唱えるのではなく、より幅広く、また積極的に解釈し、より身近なところから「多様な生き方や考え方が迎え入れられる」社会を目ざしているとも読める。
 しかし、高齢者、障害者、子どもを権利の主体として捉えなくて良いのだろうか。

 また第一期では「障害のある人とその家族を支えるサービスの充実」「障害のある子どもや養護に欠ける子どもの子育て支援」など、最低限の生活を権利として保障しようとの姿勢が強かったのに対して、第二期では「自立」「社会参加(高齢者の就労など)」が強調されている。
 自立こそ目ざすべきところだということは確かなのだが、最低限の生活は基本的人権だ。そこをしっかりとしないと障害者自立支援法のように、その理念に反し、自立を阻害することにならないか心配だ。

公共投資の節減

 第一期では「歩くまち」に対応した公共交通の整備、都市圏内の交通網、広域交通網の整備、あるいは高度情報通信社会に対応する基盤整備などが並んでいた。
 第二期では、「市民の視点にたった道路」等の整備といった言葉があるだけだ。加えて「市民と一体となった維持管理・補修を行う」となっている。
 またこれまでの「保全・再生・創造」の都市づくりを基調として、エココンパクトな都市を目ざすとしている。

活性化

 第一期では「活力あふれるまち」と抽象的で一般的だったが、第二期では「環境と社会が育つまち・京都」を未来像として掲げている。
 一方、第一期では産業連関都市がキーワードだったが、第二期では「新たな価値を創る都市」とされ、やや抽象的になっている。
 観光では量から質へとともにMICEが取り上げられ、「若者が集い能力を発揮する」にかわり「国際化」が取り上げられている。

市民参加・協働

 第一期では3章全体が「市民と行政の厚い信頼関係の構築」に当てられていた。
 第二期では都市経営の理念として「参加と協働」がうたわれ、未来像として「支え合い自治が息づくまち」、重点戦略として「地域コミュニュティ活性化戦略」が挙げられているが、分野別方針には見あたらず、行政経営の大綱で、また少し出てくるという構成になっている。


 そのため第一期にあった「まちづくりを支える仕組みづくり」「市民が政策形成に参加できる仕組みづくり」「市民とともに行う評価の仕組みづくり」といった項目は消えている。
 これらは市から見れば既に実現できたから書く必要はないということだろうが、コミュニティの活性化のために「住民による自立的、自律的な地域運営を行政が側面から支援する」という重点戦略のための具体策が、どこにも出てこない。また第一期に掲げられた仕組みづくりが十分に達成できたとも思えない。制度ばかりつくったり、弄っても仕方がないが、つくったからもう良いという物でもないだろう。検証、進化が必要なのではないか。


 以上、面白くもない話が続いてしまった。
 またパブコメの期間は終了してしまっている。どちみち読むなら期間内に読んで、無駄でもパブコメを出すべきだったと反省。