『まちづくりコーディネーター』セミナー開催(2)

まちづくりコーディネーターとは何か

 昨今、住民主体のまちづくりへの期待が高い。地域のことは地域の人々が主体的に決めていくべきという美しい話と、お金も人も足りないのでドブ板行政をいつまでも続けられないという行政側の現実があるのだろう。


 しかし、住民がまちづくりに取り組むと概ねうまくいくかというと、そうはいかないという。


 リムボンさん曰く「戦略的な仕掛けがないかぎり必ずと言っていいほど失敗する。たとえば、地域の自治連合会などが組織している「まちづくり委員会」などでの会合では、生活に根ざしたさまざまな課題について住民のみなさんが真剣に議論をし、熱心に取り組んでおられるのだが、時として、議論が堂々巡りを繰り返したり、焦点がぼやけたりして、「まちづくり」が何年もの間まったく進展しないことがある。そしていつのまにか活動そのものが自然消滅してしまう」。


 「そこで登場するのが「まちづくり」コーディネーターという職能だ」。「「まちづくり」とは、抽象的な議論だけでは済まされない。具体的な問題解決策を必要とする、極めて実践的な取り組みである。したがって、「まちづくり」を成功に導くためには、地域が直面している問題を冷静に分析し、時には実態調査なども実施し、問題を解決するための道筋を描きだす作業が必要となる。これをリードするのがコーディネータの役割である」(p12)。


 そうだとすると、各地でまちづくりにかかわる専門家派遣が行われているが、どう違うのか。
 そえは「生活に根ざしたさまざまな課題について」いちから一緒に考えるということだと思う。
 その点が、たとえば地区計画を作るために専門家が派遣されるという制度とは、本質的に異なる点だ。


 本書にも地区計画を目的に地域に入った例が報告されているし、その境は机上で考えるほど大きくはないのだろうと思うが、それでもこの点は重要だと思う。



 僕のブログをずっと読んで頂いている方なら、ドイツのコミュニティ・マネージメントの話を思い出して欲しい。ドイツではコミュニティ再生のために真っ先に取り組むのがコミュニティ・エンパワメント。そのためにコミュニティ・ビューローを開設し、コミュニティ・マネージャーを雇うことだった。
http://d.hatena.ne.jp/MaedaYu/20100604/


 これって、考え方が似ていないだろうか。
 本書にも城巽学区に入って、自身の趣味のバンド「ナベガンチ」のパフォーマンスをどう効果的に使うかに知恵を絞っていたコーディネーターの報告が載っている。「どうやら城巽五彩の会はコーディネート力をみがき、私は一芸をみがき、お互いに成長してきた」(p98)とあるが、エンパワメントに見事に成功している。(ただし、コミュニティの成長がまちづくりコーディネーターの功績と言い切れるかどうかは分からない。)

乞うご期待

 喧嘩売ります!なんて言っても、人寄せの文句にすぎず、結局ポーズだけということも多い。
 悪気はなくても、実際言葉で喧嘩をするとなると、難しい。罵り合いはできても、知的な喧嘩なんて、滅多に見られないのが日本だ。


 だから、ちゃんとした喧嘩になるのか、それとも馴れ合いに終わるのか、あるいはまた、執筆者が怪獣リムボンから逃げまどうだけに終わるのか・・・・。


 きっと、喧嘩なんておおぼらに終わってしまうかもと恐れつつ、それでも、楽しみだ。

(おわり)


セミナーの案内(2010.09.08、京都)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1009limu/index.htm


○アマゾンリンク
リムボン、寺本健三、大島祥子、北川洋一、朝倉眞一、高木勝英、木下良枝、田中志敬、醍醐孝典、佐藤友一、相良昌世、森川宏剛著『まちづくりコーディネーター


室田昌子『ドイツの地域再生戦略 コミュニティマネージメント