コミュニティ・ビジネスを知ったのは(特報(2))


 僕がコミュニティ・ビジネスという言葉に出会ったのは『都市のリ・デザイン』という本だ。その第2章で加藤恵正さんが「エコノミー&コミュニティ/ブランチ経済から地域に根ざした参加の経済へ」というタイトルで書かれていた。
 当時、支店経済の再編成が話題になっており、神戸や大阪もリストラ対象になっていた。これに対して内発的自律的な発展をめざし、第三の経済主体としての非営利セクターとコミュニティ経済に着目した章だった。


 そしてコミュニティ経済として、シリコンバレーなどに代表されるビジネス・コミュニティと、コミュニティ・ビジネスを取り上げていた。


 後者についてはイギリスを例に「コミュニティが設立・所有し、運営を行う経済組織であり、コミュニティのメンバーに仕事を提供することにより、コミュニティの維持・発展を促すことを目的としている」と紹介していた。


 具体的には補助金に頼る緊急失業対策型、中古家電販売など独立を目ざす商業型、家庭内での仕事を市場化しようとする家庭事業型、施設の貸与、管理・運営のレンタルにより多様な地域活動を支援する「開発エージェント型」があるという。


 本書には説明がないが、「開発エージェント型」というのは開発トラストのことだろう。政府等から不動産を借りたり買ったりして、修復・運用することで活動資金を稼ぎだすタイプだ(西山康雄、西山八重子編著『イギリスのガバナンス型まちづくり―社会的企業による都市再生』参照)。


 このコミュニティ・ビジネスの定義は日本で考えるにはあまりに狭すぎる。
 また、今になってみると、グローバル経済での勝者を狙うビジネス・コミュニティの話と、地域にこだわるコミュニティ・ビジネスが並列に論じられている点に、異和感がある。「両者は対立するものではなく、相互補完的な関係にある」(p76)というのは果たしてどうだろうか。


 興味深いのは続いて文化ビジネスの例としてシャンソニエを紹介されている点だ。モンマルトルに集積する、かつて芸術家達がたむろした安酒場が、観光客に人気のシャンソン酒場となっているという。それは「個人で活躍する歌手の緩やかなネットワークが形成する文化経済」であり、「次世代の都市の経済を予見するキーワードが、広義の「集客性」にある」(p79)という指摘は秀逸だと思う。


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