安田亘宏『食旅と観光まちづくり』
たこ焼き食べに1日がかりで行くか?
僕もワイフも、旅と言えば、まずは食事だ。
昔は温泉もよかったが、ちょっと事情ができて行きにくくなった。そうなるとますます食べるものに関心が集中する。
とは言え、遠くまで行くかぎりは、それなりの物が食べたいと思って奮発していた。
だが、今は違うらしい。
大阪での研究会のこと。いかに堺のたこ焼きが美味しいかを力説され、是非、おいでくださいと言われた。
そう言われても「京都から食べに行く気はしません」と言ったら、若い、ないしあまり若くない女性陣から「全然、分かっていない」とガンガン言われてしまった。それでも半信半疑だった。
遠くまでB級グルメを食べに行く旅があるとは!!(明石たこやき、佐世保バーガー)
なんと、B級グルメが一番人気
『食旅と観光まちづくり』はそんな僕には実に勉強になる。旅行者の食旅経験や意向がどんなものか、書かれているからだ。
掲載されている調査によれば、なんと「今まで行ったことがある食旅」の一位はB級グルメ。う〜ん。東京から富士宮まで焼きそばを食べにいく酔狂な人は、多数派だったのだ。
次に多いのが「買う食」だという。何れも若い女性の経験率が高い。しかし男性に限ればB級グルメは若者に人気があるが、買う食は男性高齢者に人気があるという。
朝市やファーマーズマーケット、それに直売所などには若い男はデートに行かないのだろうか? それを言えば、デートがB級グルメかよ!?(ただし、これは想像であって、食旅に誰と行ったかは調査されていません)。
高級食材も健闘している。代表はなんと言ってもカニだ。
カニは高級食材の代表。そして「市」は女性はもちろん高齢の男性にも人気がある(函館市場)
呼子のイカの活き作りは漁師と料理店の工夫と連携のたまもの
想像が膨らむ食旅とまちづくり
この本は言うまでもなく食旅と観光まちづくりの本である。だから、どこに行ったら何が美味しいとか、ここにいってこんな食べ方をしたら美味しそうとか、そういうことをガイドしているわけではない。
それでも、今年の夏休みはちょっと贅沢して日間賀島にいこうとか、京都でこれを食べるのは止めた方がよいぜとか、ついつい考えてしまう。
もっと真面目にならなきゃいかんのだが、ついつい、食の宝探しならこうしたら良いな、とか、物語性のある食ならあれだとか、考えてしまう。
食は、それだけ、身近だということに違いない。
そして、他の芸術と比べたら、権威主義に染まっていない。一部ミュシュランのような動きもあるが、普通は美味しいものは美味しい、不味いものは不味いと言える。
昔、旅館に行って料理が不味いとぶーたれたら、上司から「うまいものが食べたかったら民宿に行け」と言われたことを覚えているが、質と値段が比例しない事が昔から当然視されていた点も面白い。
特徴ある食の空間はまちづくりの中核となる可能性も(青森屋台村、横浜中華街)
地産地消とか旬産旬消、あるいは地域内経済循環と、偉そうに言えば数々の利点がある食を生かした観光まちづくりだけど、一番大きな可能性はこの身近さではないか。そして一人一人が意見が違い、値段に比例するとも限らず、だけどまあ、血を見るほどに真剣になるものでもないという点ではないだろうか。
地方の疲弊が言われて久しいが、食については新鮮さだけでも十分に勝算はある。
僕もこの本がど〜んと売れたら、美味しいもの探しに出かけたい。
○食旅と観光まちづくりホームページ
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1273-6.htm
○食旅と観光まちづくり出版記念セミナー
2010年9月25日・大阪
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1009yasu/index.htm
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安田亘宏著『食旅と観光まちづくり』