長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(6)

従来型観光と体験型観光

 次の事例は都市観光だ。「体験観光ネットワーク松浦党」の事例を紹介されたあと、まとめられている表が面白い。


従来型観光 体験型観光
簡単、楽(らく) 大変
やさしい むずかしい
お手軽、すぐできる 時間がかかる
安全、雨天中止 危ない
便利、合理的 不便、不合理
近代的、最新式 原始的、旧式


 長坂さんは、従来型観光は郊外の大型ショッピングセンターと似ていて、体験型観光は衰退した中心市街地のようだと言われる。
 体験型観光が不便さに代表される六つの理念を強みに転化したように、中心市街地も逆転の発想を持つことはできないか、これをまちづくりのヒントにできないか、と書かれている。

 これは、面白いけれども、容易ではないと思う。


 体験型観光は、自然とか、一次産業とか、ホンモノの強さがあるが、物販だけの商店街にはそれが出にくい。製造と販売が一体となったお店がないと、いまいち面白みがないのではないか。


 「一度ホンモノに触れたり思いがけない感動を得た人はリピーターになる確率が高い」というのは本当だろう。


 その点、草稿でも紹介されているが、旅めがねの「大正・三軒家 下町水辺の楽園ツアー」体験記(9.26)で紹介した商店街食べ歩きは、手づくりの感覚があって楽しかったが、もの作りの工程が目に見える場面が少なく物足りなさは残った。


 旅めがねには食旅という視点からツアーを推薦して頂いたのに、欲深すぎると言われそうだが、もう一工夫、ふた工夫ないと僕はリピーターにはならない。


 1月20日セミナーで三橋重昭さんが強調されていたが、中心市街地には創造力が必要だ。
 先日も書いたように、僕は物販には限界があると思う。飲食や美容、さらには工芸など、そこにしかいない職人に支えられたオリジナリティが欲しい。普段、見られない工房などものづくりの過程は最高の観光資源だと思う。


 西郷真理子さんも、山口市中心市街地での取り組みを紹介する番組のなかで、地元の人たちと結びついてお店独自のものをつくることの重要性を強調しておられた(2011年2月20日BS11、21時)。


 長坂さんも「他の多くの地域でもまちなか観光が行われているが、物販を軸にした企画は従来の商店街活性化の延長に過ぎず、興味は長続きしないであろう」。「商業も観光もあまりにもマスになりすぎた。マスに飽きた人々の心に響く取り組みができるかどうかが、まちなか観光の本質ではないかと思う」と書かれている。


 商店街は売るだけではなく、つくることも意識しなければならない時代だと思う。


続く

横森豊雄・久場清弘・長坂泰之『失敗に学ぶ中心市街地活性化―英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例