ノッティンガムの中心市街地

学芸チャンネル(仮称)で街路の様子を紹介






 会社ではじめた学芸チャンネル(ユーチューブ)に『失敗に学ぶ中心市街地活性化』の共著者、長坂泰之氏(中小企業基盤整備機構近畿支部)が撮影されたノッティンガム中心市街地の様子を掲載している。


 ノッティンガムは人口30万ほどの中小都市だが、イギリスのショッピングセンター&中心市街地ランキングで第五位にランクされている衰退を食い止めた街だ。
 92年に中心市街地活性化に取り組みはじめ、駐車場整備とアクセス改善のための歩行者専用空間化が進み、そしてLRT路面電車)がPFIにより導入された。


 同書に掲載された地図によれば、駅の近くに大規模ショッピングセンターがあり、そこからもう一つの大型店ビクトリアセンターまで、商店街が続いている。
 ビデオはビクトリアセンターに向かい、そこからまた市役所に向かうまでの街路の様子を撮している。


 ともかく、やたら人が多い。
 同書では歩行者通行量が市役所付近で7万7千人と紹介されているが、たいして広い道ではないので、京都ならさしずめ祇園祭の時のような賑わいだ。

果たして成功か?

 成功の要因の一つは2核1モールという明快な構成だろう。
 ただ、これが気にくわないという人もいる。先般紹介した『「場所」と「場」のまちづくりを歩く』で岩見良太郎さんもノッティンガムを取り上げている。

 人の多さ、低い空き店舗率、全国商業ランキング2位(当時)といった数字を上げながらも、なぜ、そんなに人が集まるのか分からないという。


 ノッティンガムでも中心市街地を一つのショッピングセンターとみたて、計画・整備するためのシティセンターマネジメントが91年に設立されている。
 だが、岩見さんによれば、その担当者は1人しかいないようで、委員会のメンバーも、市(6)、県(2)、警察(2)以外はマークスアンドスペンサー、マクドナルド、先の2つの大規模ショッピングセンター、銀行、バス会社などの代表者ばかりで、一般の小売店の利害を代弁できるのは中心市街地小売業協会の代表しかいない。また住民代表もおらず、結局、大手資本と行政がパートナーシップを組んで商店街づくりを仕掛けているのではないかと言う。


 おそらく、それはその通りなのだろうが、「そのどこが悪い」とも言える。


 『失敗に学ぶ中心市街地活性化』によれば、タウンセンターマネジメント(シティセンターマネジメント)という考え方自体、マークスアンドスペンサーやブーツといった大手小売業者によって提唱されたものだという。だから元々、地元小売業者中心という発想ではない。
 店舗のなかだけしか考えない、あるいはお客さんのことは考えても、街のことは考えない大手小売業者よりも、考える業者のほうが何倍もマシだし、実際問題、ある程度の規模の中心市街地になれば核店舗が必要だろう。


 日本では大型店が中心市街地から撤退して、ますます街が寂れてしまう例も多いと聞く。ダメになったから撤退するではなく、まずは街と店の再生に力を尽くす大型店が求められている。
 とはいえ、いくら効率的でも、日本では大手と行政だけで仕切るというわけにはいかないのではないか。また、それだけでは面白くならないようにも思える。


 岩見さんの指摘で気になるのは、大型店の比重が大きいだけではなく、個店もどの街にもあるようなありふれた店ばかりだという点だ。人々の日常生活に密着した市場もビクトリア・センターの一隅にあるが、裏寂れ、エスニックの食材以外、今にも潰れそうだという。
 ノッティンガムの人たちがそれで満足なら、仕方がないが、私は核店舗や表通りのお店だけではなく、路地裏に個性的な店があって、そこそこ流行っているような街が好きだ。


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