長坂泰之『中心市街地・活性化のツボ』(3)

賑わいの復活か、持続可能性の獲得か

 中活三法で商店街を切り捨てた政府も、さすがにこれではまずいと思ったのか、新中活三法では郊外の大型店規制に踏み込んだ。
 ただ、規制をするかしないかは自治体に任された部分が多い。そのため、積極的な規制策を導入した自治体は中活の基本計画の認定を受けた83自治体に留まっていると長坂さんは言う。

 その認定を受けた自治体も、自身の規制を強化することはできるが、隣の市町村には手を出せない。だから、高い目標を設定して真面目に努力しても、ある日突然、隣町に大型ショッピングセンターが出来てしまえば目標の達成は難しい。
 そこで安全を考え、基本計画の目標を達成できても、活性化できたとはとても言えない低い目標しか掲げられていないという。中心市街地の活性化を進めるためには、国レベルでの郊外規制は避けて通れない課題だ、と憤りをこめて書かれている。


 ところで、ここで、誤解をしてもらいたくないのだが、なにもバブル以前、あるいは商店街がなにをしなくても儲かって仕方がなかった時代に戻そうと言っている訳ではないということだ。


 そんなことは、たとえ郊外規制を国レベルで強化しても、無理だろう。すでに出来てしまった郊外店は規制でどうこうできないし、今でも充分、飽和状態にある地域も多いからだ。


 この点について『広域計画と地域の持続可能性 (東大まちづくり大学院シリーズ)』のなかで瀬田史彦さんは、活性化のイメージが変わったと指摘している。富山の活性化計画を取り上げ「かつての賑わいは取り戻せないけれども、都市機能がそれなりに揃っている。そして豊かな生活環境を享受できる、弱者も安心して暮らせる、といったことがイメージされているのではないか」(学芸セミナー)と書かれている。


 僕たちの会社をみても、最盛期の売上げに戻るなんてことは想像しにくくなっている。人口減少、とりわけ専門学校の減少等の影響で、毎年確実に減っていく売上げを、なんとか少しでも押し返し、持続可能な状態にしたい。お金は乏しくなっても、仕事に誇りと充実感を持って、それなりに幸せ感のあるあり方を模索したい。


 ある意味、これは世の中全体に共通する気分ではないだろうか。


 まして床面積がやたらに増え、商業売上げが減っているなかでの中心市街地活性化だ。人出や売上げという面からみれば、かなり低レベルなものにならざるをえないし、それが現実的だと思う。


 問題は、そうであっても、それなりに豊かな都市生活が送れ、むき出しの競争社会ではなく、弱者もきちんと生きていける街、そして未来を信じる人たちには挑戦の場を提供できる街、そんな街(中心市街地)になれるかどうかではないか。


 それすら郊外大型店の進出で危うくなっているのだとしたら、国主導が良いかどうかはおくとしても、なんらかの広域調整が必要なことは間違いない。


続く



○参考資料
ノッティンガムの中心市街地
学芸チャンネルでの長坂さんのビデオと、その解説です。


横森豊雄・久場清弘・長坂泰之『失敗に学ぶ中心市街地活性化―英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例


大西隆編『広域計画と地域の持続可能性 (東大まちづくり大学院シリーズ)』瀬田 史彦「3章 地域活性化と広域政策」