産業復興の様子


 関満博さんが『経済セミナー』の増刊号に「被災中小企業の諸類型と復興の課題」を書かれていた。


 関さんによると、ものづくりの中小企業は思いの外早く、再稼働しているそうだ。


 たとえば岩手〜宮城県北部でも、この20年間ほの間で進出したハイテク系の中小企業は、進出時に平地に空きがなかったことから、少し高台に立地していたことが多く、津波を免れたため、立ち直りも早い。また被災した場合も、関東等の関連工場に生産を移管したり、内陸部の空き工場を借りて仮操業に入っているところもあるという。


 ただし、水産業関連のコンプレックスは奇麗に押し流されてしまった。
 この再生が大きな課題になっている。


 水産関連の地場産業の共通基盤である製氷施設、冷蔵、冷凍庫は、漁協等を通じて公的に支援されて復活する可能性が高いが、水産加工工場、小規模造船所や鉄工所、船舶無線などの電気関連企業などは、事業者の復興への意欲に任されることになるそうだ。
 しかし、いくらインフラを公的資金で再生しても、これらも復活しないとサプライチェーンが完結しない。


 これらの工場は、二重ローン等などを含め様々な課題を抱えているが、都市計画との関連で言えば、元の場所で再開できるのか、高台等へ移転せざるを得ないのかが問題となっているという。
 とくに高台に移転したり、元の場所を嵩上げするとなると、すぐに本設の工場は望めない。だから、本設までの仮設工場が大きな課題になる。


 一方、茨城県や東北内陸部での地震による被害からの復旧は早い。心配されたレベル(水平)の確保も、全国の仲間から精密水準器が貸与されたり、レベル出しの支援チームが編成されて急ピッチで進んでいるという。地震災害からの中小企業の復元力には目を見張るものがあったそうだ。


 難儀なのは福島の放射能汚染地域だ。
 元の場所での再開の目処が立たず、仮に当面ダメと見極めて避難先で仮設工場などを立ち上げても、従業員もちりぢりなら、地元の事業所を相手にする中小企業の場合は顧客もちりぢりになってしまっている。
 それでも、ともかく仮設工場、貸し工場を利用して再開することが大切だと、関さんは強調している。事業意識の停滞だけは避ける必要があるからだ。


 夜9時からのNHKのニュースを見ていたら、ちょうど被災地からの人口流出が報じられていた。
 産業が復活しないと仕事がないので人が去っていく。そうすると商業も成り立たなくなり、ますます人が減ってしまう。こうなると悪循環だ。


 コメンテーターとして出ていた兵庫県立大の加藤恵正さんは、「仮設でも良いので、すぐにでも再開できるように、都市計画と折り合いをつける必要がある」と言われていた。


 なんとかスピーディに仮設の建設を応援出来ないものか。