まちづくり市民事業(4)
3 まちづくり市民事業の5つの原則
佐藤さんは「まちづくり市民事業を排他的に定義する必要はない」としつつも、議論を拡散させないために、できれば備えているべきこととして、下記の五つの原則を掲げている。
3-1 地域協働の運営体制
「地域とともに支え合うことが最も基本的な原則であり、多様な地域組織と連携することが肝要である」。
「そのためには、事業プロセスの開示が基本となる」とされている。
独善的、閉鎖的な組織は他と連携しにくいからだ。
3-3 地域への展開と運営組織の形成
「開かれた組織が相互に連携する態勢を組み、連鎖・増殖するのがまちづくり市民事業の本来の姿である」。
3-4 担い手による共創のプロセス
「義務感や責任感だけではなく、生き生きと創造的なプロセスを自ら進んでいく」。
そして、「自らの力と創造力でより好ましい事業の実現につなげようと取り組む」。
3-5 地域経済基盤の形成と事業の自律性
「地域社会や行政に一方的に負担をかけるのではなく、地域の自律的な経済基盤を築くことと並行して事業が組み立てられる」。
そしてこの〈自律性〉は、「自らが組織をコントロールすることだけを意味するのではなく、外部に開かれた組織であることも求めている」。
4 まちづくり市民事業の連携プロセス
次に佐藤さんはまちづくり市民事業が生まれ、複数の事業が連携し、それらが連鎖、波及して都市地域の再生につながるプロセスを5段階で描いて見せる。
4-1 まちづくり市民事業の生成
まず、個々のまちづくり市民事業が生まれる。
たとえばそれは中心市街地の空き家を利用したケア施設であったり、コミュニティ・レストランであるかもしれない。
また、もはや単独の事業としては成立しがたくなっている「権利者参画の共同事業(組合方式)が、地域社会との開放的な関係を築き、地域の多様な主体と連携し、事業を市民事業として支える仕組みを創発することから始まる」場合もある。
4-2 まちづくり市民事業の連携と波及
様々なまちづくり事業と連動し、これらがネットワークし「多主体連携の態勢」をつくる。
それらを支える、まちづくり市民事業の〈プラットフォーム〉が生まれる。
4-3 地域社会基盤への貢献
こうして「個別の不連続なまちづくり市民事業が有機的に連携することにより、空間的文脈が形成される」。
たとえば「水辺や緑地などのコモンズのネットワークの形成」であったり、広場的なスペースの連続でったり、歴史的な町並みが誰もが認識できる程度に立ち表われてくるといったことだろう。
これは、4-1の個々のまちづくり事業の成果がバラバラにできてくるのではなく、「多主体連携の態勢」のなかで、地域社会基盤と呼べるほどに、目にみえる形でまとまった姿を表してくる段階と私は理解した。
4-4 まちづくり連携(パートナーシップ)組織への展開
佐藤さんは続けて「まちづくり市民事業が集積されてくると、これを連携させて一つのビジョンの元で、個人の事業や公共事業、あるいは様々なソフト事業も含めて、地域全体の事業をコーディネートし全体をマネージメントする必要が出てくる」。ここに「多様なまちづくり市民事業を連携させ運営し、あるいは公的資金の受け皿ともなる」「まちづくりパートナーシップ組織」が生まれるとされる。
これは個々のまちづくりを超えて、ある程度の範囲で、地域をマネージメントする主体としてまちづくり市民事業を担う組織が連携した組織が立ち上がってくるということだろう。
これは一種の近隣政府だろうか?
ある意味、その機能の一部を担っているように見えるが、基礎自治体との関係はどうなるのだろう。
これについては後でもう一度、考えてみたい。
○参照
・佐藤滋さんへのインタビュー
蓑原敬編著『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』に寄稿された「地域協働の時代の都市計画――まちづくり市民事業からの再構築」についてお聞きしました。
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/012sato/s_index.htm
○佐藤滋さんの本
佐藤滋編著『まちづくりデザインゲーム』
○季刊まちづくりの関連特集
「まちづくり市民事業と中心市街地活性化」『季刊まちづくり 21』
「まちづくりから地域マネジメント戦略へ」『季刊まちづくり 29』