季刊まちづくり29号、いよいよ印刷(2)

都市計画の近未来

 さて、広原さんは別のところで「(私の考え方は)従来のハコモノ中心の都市計画論、都市開発論とは全く違います。むしろ社会学に近いまちづくり論かも知れません。でも、これが本当の京都のまちづくり論なのです」(注1)と言われている。


 それに対して現在の都市計画の議論は、たとえば都市計画学会が「もっと深いところは他の学会でやってという役割分担があ」り、改革論も計画的な手続きと手法とボキャブラリーの豊富化と言ったところに議論が閉じていると批判されている。


 そしてなによりも、人口減少時代などと言いながらも、成長時代の都市計画の概念で考えている。「都市が縮小し、衰退して、まだら状に衰退していく。そのような時代に計画という概念で全体を覆うような制度設計論は果たして有効なのか」「膨張するときは線引きは有効だけれども、今あるものを線引きして外れた地域にのたれ死にしろっていうのは、計画とは言えない」と手厳しい。


 では、どうすれば良いのか。
 広原さんは「1段階目に計画は必要だとしても、2段階目はマネジメントという形で構築して、3層目はもう少し柔らかいものでやるとか、重層的な構造の体系をつくることこそ、制度設計の意味があるんじゃないか」と提案されている。


 従来のハコモノ中心の都市計画論から、むしろ社会学に近いまちづくり論への傾斜は、決して珍しいことではない。
 10月30日のセミナーで話していただいた久隆浩さんは典型で、近大に総合社会学部ができたとき、そのコアメンバーとして理工学部から移ってしまわれた。


 次世代研という都市計画学会関西支部の若手中心の集まりでも、従来の都市計画ではないところに、都市計画分野からのまちづくりの可能性を見いだそうと試行錯誤している。


 一方では、『人口減少時代における土地利用計画』を上梓された川上光彦さんが、関連のセミナーでも強調されていたが、人口は減るが、スプロールは止まらないという予測もある。人口が増えているときに自然を壊すのは百歩譲って仕方がない面があるとしても、人口が減るというときに、焼き畑のような開発をやっていくのは、なんとしても避けたい。


 「今あるものを線引きして外れた地域にのたれ死にしろ」というのは、受け入れられないだろうが、安静にして貰うことは考えなければならないのだろう。同じセミナーで兵庫県の難波健さんは、「線を引いたことが間違いで、面で考えなければならない」と言われたが、同感だ。


 話が大きくずれてしまった。
 成長をコントロールするのと比べて、縮小をコントロールすることは難しいが、必要性はむしろ大きいと思う。ざっくりした目標像をもちながら、時々、場所場所でマネージメントしなければならない。難しいのに地味な仕事だ。


 その地域マネージメントを佐藤滋さんを中心にお書き頂いたのが、季刊まちづくり29号の特集だ。
 佐藤さんが言うまちづくり市民事業を軸とした地域マネージメントは、まだはっきりした姿は見えにくいが、それだけに挑戦心に溢れた特集である。

 期待下さい。

(おわり)

注1:京都市職労委員長 池田 豊 インタビュー「龍谷大学教授 広原盛明さんに聞く」(http://www.kyoto-21.com/shisyokuro/html/election/2004kyoto-sityou/interview-hirohara/interview-hirohara01.html