『転換するグリーンツーリズム』の青木さんの講演会〜その2〜

観光とツーリズム

 青木さんは観光とツーリズムを峻別される。
 簡単に言えば、観光とは過去のマスツーリズム、物見遊山、商業主義を象徴する言葉であり、ツーリズムとは、本来の観光、あるいはこれからのあるべき観光を象徴する言葉として使われているようだ。


 その青木さんの考えは、次の例によく現れていると思う。


 それはスキー場の再生の話だった。
 かつてスキーが盛んであったころ、かいこ棚のようなところに何十人も詰め込む宿泊施設、1時間も待たせるスキーリフトであっても、若者がワンサカ押し寄せた。
 それが若者の減少、スキー離れで、閑古鳥が鳴きだし再生を迫られている。


 「そうだ、グリーンツーリズムでもやろう」と、青木さんのところに相談に来る地域もあるという。
 青木さんが最初に言うのは、
 「儲かりませんよ」
という冷たい言葉。
 「定員100人のところを20人にできますか」
 「囲炉裏を切って、そこでお客さんと差し向かいで話せますか」
 それが出来るなら脱却できるんじゃないですか。
 効率や儲けを第一にやっていると、化けの皮がはがれますよ。


 いや、そういうチマチマした話ではなくて、昔の賑わいを取り戻したいんだ、ところもあるだろう。というか、そういうところが大部分だろう。
 しかし、である。
 テーマパークで成功しているのは、極端に言えばディズニーランドだけだ。あそこは、日々、新しいアイデアを出し、更新し続けている。だからディズニーランド自身は持続可能かもしれない。


 だが、あそこで働く人はどうか。
 ディズニーランドで働くと5年持たないという話もある。日々、新しい企画、受ける企画を出し続け、社内外の競争に打ち勝たなければならない。
 それだけの覚悟が、皆さんにありますか?
 そこまでやる気なら、それも良いでしょう、とも言われるそうだ。


 う〜ん。厳しい。それなら、ボチボチ儲けられたほうが良いか。
 しかし「囲炉裏を切って、そこでお客さんと差し向かいで話せますか」も、一つの例示であって、どこもかしこもが真似をすれば、飽きられてしまうに違いない。

続く

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青木辰司著『転換するグリーン・ツーリズム―広域連携と自立をめざして