『転換するグリーンツーリズム』の青木さんの講演会〜その3〜

どんな感動を与えるか

 では、グリーンツーリズムの本当の強さ、ディズニーさえ負けない力はどこにあるのだろうか。


 青木さんはディズニーは約束された感動を与えるシステムだという。
 パレードはこんなに楽しい、ミッキーとの出会いがこんなに素敵。それらは宣伝され、期待され、そして実現される。


 しかし、グリーンツーリズムは違う。
 お米をつくって楽しい、囲炉裏を囲んで会話が弾む・・・・そういう予測できる愉しみ、感動を与えるだけであれば、ディズニーにはかなわない。
 では予測できない感動をどうやって与えるのか。


 青木さんは、農業体験に行った学生たちが、もっとも楽しかったと言ったシーンとして、田畑のそばの水路に顔をつっこんでいる学生たちの写真を示した。
 暑い日中に水路の冷たさがどんなに心地好いか。そんなことを予測できるだろうか。


 ここからは僕の想像だが、予測できない感動は、やはり、人と人とが会話すること、違った文化のぶつかり合いから始るのではないか。
 ディズニーやマックのようなマニュアルの世界を離れ、違った価値観、ちがった文化をもつ人と人が、ゲストとホストという関係を少し超えてお互いの文化に踏み込んでみる。そこに予測できない感動が生まれる可能性がある。


 ただし、予測できない不愉快さも生まれる可能性もある。これが行き過ぎると、破綻する。
 だから、グリーンツーリズムでは、何を期待されているか予測可能なお客さまへのホスピタリティではなく、来訪者が何を期待しているかを一緒に見出すホスピタリティが必要なのだろうか。これは、とっても難しそうだ。


 まあ、そこまでの感動を期待して、いつもそれが実現できなければイヤというものでもあるまい。だいいち、予測できない感動は予測できないから感動するのだ。たまには、そんなことがあるかも、というぐらいの、のんびりした旅をできるような人間になりたい。

(了)

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青木辰司著『転換するグリーン・ツーリズム―広域連携と自立をめざして