青木辰司著『転換するグリーンツーリズム』〜その2・セカンドステージ

セカンドステージの展開

 昨日は途中から個人的な愚痴になってしまった。すみません。
 本題に戻ると、青木さんの本の核となるセカンドステージとして取り上げられているのは、下記の六つだ。

 収入も伴う身の丈の自己実現。これは農家民宿農家レストランなど。農林漁家民宿お母さん100選に選ばれた方々など、すでに実例がたくさん出ているという。
 ただ、マスコミ等にとりあげられて有名になって本質を見失う危険もあるという。

  • 労働貢献型グリーン・ツーリズム―ワーキングホリデー

 互酬性、双方向性というツーリズムの基本に立ち返るもの。学生の元気な声が集落に少なからぬ影響を与えている例も出てきているという。

  • 学習型グリーン・ツーリズム―ラーニングバケーション(ツーリズム大学)

 九州や東北のツーリズム大学が紹介されている。ただ、これは大社さんのグローバルキャンパスが頑張っているし、京都でも同志社とJTBfが楽洛キャンパスをはじめている。
 本書でも前半で遠野物語研究所や遠野学会が紹介されているが、ツーリズム大学に限定せず、もっと幅があっても良いのではないか。

  • 教育体験型グリーン・ツーリズム―教育体験旅行、修学旅行

 青木さんは、国の農山村交流プログラムに期待して章を別にたてて紹介してくださったが、省庁の思惑の違いや、政権交代で滞り、冷静に考え直す時期にあるという。
 そのなかで僕が感心したのは地域内交流と位置づけ「ふるさと体験学習委員会」を立ち上げて市ぐるみで取り組んだ胎内市だ。
 京都市市町村合併京北町と一緒になった。京都でも取り入れて欲しい試みだ。
 ただし、大勢の生徒さんが来るので受け入れ量の確保のための、広域連携が必要との指摘もあった。もっともだ。

  • 資源活用型グリーン・ツーリズム―滞在型市民農園、ホテル・学校施設、空き家・古民家活用

 滞在型市民農園や空き家・古民家を活用した民宿、たとえば今治市大三島の「べじべじ」、そして廃校を利用した「森の巣箱」「四万十楽舎」などが紹介されている。
 滞在型市民農園は山本さんの「農ある暮らしで地域再生」でも紹介したことがある。
 当時はまだ試行段階との印象だったが、青木さんによると笠間クラインガルテンは五年の契約期間を終えたユーザーが市内に定住しているという。これは凄い。

  • 人間福祉型グリーン・ツーリズム―癒し、ヘルスツーリズム

 農作業を愉しみながら健康増進や健康回復を行うもの。
 必ずしも農作業を伴わなくても良いのだろうが、単に身体の健康だけではなく、心の健康も考えると農の多面的な営みに触れることの意義は大きいと言う。

体験型偏重から滞在型へ

 青木さんは体験型偏重には警鐘を鳴らし、滞在型への移行を訴えている。
 そのための処方箋を書かれているが、僕が気になったものを紹介しよう。ただし、青木さんの重み付とは一致しない。あしからず。

  • 長期滞在を求めて自発的に目的意識をもって行動するツーリストへの対応

 僕のようにお金をかけずに良い目をしようという輩ではなく、ロハスというのか、リッチだけどエコみたいな人が出てくるか、そういうニーズに応え育てられるかだろう。

  • 新しい担い手の受け入れ

 農村の高齢者は偉い。知恵がある。でもいつまでも生きてはいられない。
 その息子・娘がつながないなら、やりたい若者に継がせる仕組みが必要だ。
 各大学の「学生インターシップ」とか、国交省の「地域づくりインターン」、農水省の「田舎で働き隊」など盛りだくさんだし、青木さんは大学入試のあと、入学前に一年間田舎に行って手伝うギャップ制を提案している。
 だけど、終わったらおしまい。人生の一断面というだけでは寂しい。そのなかから担い手になりたいという人が定住できるよう、村落側も覚悟を決める必要があると僕は思う。

  • 古民家等の利用で初期投資をなるべく少なくする工夫

 古民家等をまっとうに宿泊施設にしようとすると大変だ。
 伝建地区でもある熊川宿で「熊川宿勘兵衛」に泊めてもらったが、すでに修復が終わっていたのに、宿泊出来るようにするためキッチン等を整えるためだけに700万かかったと言われていた。これはこの例のように補助金があればともかく、普通はきついと思う。
 

セミナーを開きます(再掲)

 7月12日には青木先生にきていただいて、会社(京都)でセミナーを開きます。
 関西の方は是非、おいでください。
 ・7月12日第1回学芸セミナー


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