『「和」の都市デザインはありうるか』


 田端修さんの新著。いろいろあったが、ようやく出来上がった。
 「和の都市デザイン」って何だ?と思われるだろう。
 伝統的なデザインのこと? あるいは屋根と庇を付けること?
 そうではない。
 端的に言えば、日本の都市に相応しい都市建築、都市住宅のあり方をさぐることだ。


 前提も考察も抜かして言えば、結論は、前面は街路に沿って壁面を揃える。そして両隣となるべくすき間をあけずに建てる。そして、2階ぐらいの軒下空間を街路と応答する空間としてデザインする。道は拡幅しない。
 こうすれば、仮にコンクリートの5階建ての建物でも、また京都のように庇を義務づけなくても、従来からの町並みとなんとなくつなげることができる、と田端さんは言う。


 なぜ、それが「和」なのか?
 日本の都市は、根底から変わってしまったように見えるが、実は狭い間口の小規模敷地という特性は結構残っている。
 表面的には大きく変わったように見えても、その変わらない基盤。それが和の都市だ。


 このように簡単には変わらない和の敷地の上に、洋の思想と技術で建物が建ってゆく。
 建築・都市計画の法制度は大規模な敷地に有利なようになっているし、建築技術もまた同様だ。
 だから狭い敷地で大規模に有利な制度を無理矢理使い、建て替え当然と思いつつも、つぶしにくい建物を造ってしまう。
 今日の都市のなんともいえない雑然とした感じは、和と洋のデザインの混在もあるが、なによりもまず、この本質的な矛盾から目をそらしている点にある。
 これは小さな身体なのに、大柄の人にこそ似合うコンセプトの服を、無理矢理、着ているようなもの。


 そんななかで、今まで建築や都市計画の良心は、小規模敷地を解消する共同化の実現のために費やされてきた。
 これは間違っていたのではないか、というのが本書の出発点だ。


 田端さんは京都の町なかで生まれ育った。京都市の90年代の景観施策の改定や、町家型集合住宅の開発にも加わっている。だから、空間感覚が人間的だというか、どうも東京の高層ビルの空間にはなじめないのかもしれない。
 だから時代遅れとも言えるが、人口減少の今、一週遅れのトップランナーだと思う。

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