『奇跡のプレイボール』

 『体験交流型ツーリズムの手法』の著者、大社充さんからもらっていた『奇跡のプレイボール』を読んだ。






 物語は大社さんがニューヨークに住む友達・石田さんから三十数年ぶりに手紙を受け取るところから始まる。取材でであったアメリカのスーパーシニア野球のおじさんから、「俺たちは日本人が憎くて戦ったわけではない。戦争は終わったが、決着がついたとは思っていない。ついては野球で決着を付けたいのだが、どうだろうか?」と言われた。ついてはなんとか実現したいので、力を貸してくれないか、という依頼だった。


 「これはとても意義深い試合になるかもしれない」と大社さんの奮闘が始まる。マスコミや仕事関係など、いろんな人の力を借りて参加者を募り、開催地ハワイでも、また多くの人の力を借りて実現していく。


 力をいれて書かれているのは、日本側参加者の戦争体験。そんなに極端な話でも、英雄的な話でもなく、訳の分からないうちに死ぬのが当たり前だと思ってしまった人たち。それでも、戦車に陶製の手榴弾で立ち向かうような馬鹿馬鹿しい軍のやり方に、この戦争は負けだと見通せた人たち。しかし、最後まで正面切って声をあげることはできなかった人たち。時代の雰囲気に呑まれるということの恐ろしさが読みとれる。


 一方のアメリカ人のほうは、友人が虐待された、真珠湾はだまし討ちだから、やっぱり日本人を許せないと最後になって辞退した人がいたそうだ。


 戦争を仕掛けられ勝った側は、思い悩むことは少ないのだろう。それでも、東京や大阪を爆撃したことを「おれは今でも思い出すとつらいんだ」と言った人がいたことには、ほっとする。
 現在、品切れ、重版。
 中学かなにかの夏の課題図書に選ばれたので数万部は堅いとか。羨ましい。


 (8月中旬にyahooで検索をかけたら、感想文の書き方とか、感想文例とかゾロゾロでてきた。なかには感想文がまだ書けないから、どのページをみたら良いか教えてくれ!って困った奴も。感想文例なんかみて書いてもしょうがないと思うんだが。)



 なお大社充さんの『体験交流型ツーリズムの手法』は、僕がつくった観光関係の本ではNo1の売れ行きを誇る。
 グローバルキャンパスという学習体験&交流型の旅を自ら企画し、ファンクラブを育ててきた経験が一つ一つの言葉にリアリティを与えている。観光関係の人には是非、お薦めしたい一冊だ。


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