復興構想会議の提言」(3)

 今回の復旧・復興の焦点のひとつ、生業の復活については、提言は何を言っているのだろか。


 提言は産業について1)企業・イノベーション、2)農林業、3)水産業、4)観光について述べている。

 うち2)農林業については、

   a)高付加価値化………6次産業化、ブランド化、先端技術の導入
   b)低コスト化…………大区画化
   c)農業経営の多角化…農業・農村の魅力を活かしたグリーンツーリ
     ズム、バイオマスエネルギー等により、新たな収入源の確保を図る
の三つを組み合わせると主張している。

 ただ不思議なことに塩害について触れている箇所はない。


 ところで、高付加価値化とは、「より高い人件費を払える」ということだ。たいして「低コスト化」は往々にして「人件費カット」の場合が多い。
 前者が10ヘクタールの土地で10人の人が100万円稼ぐのを良しとするとすれば、後者は10ヘクタールの土地で一人の人が500万稼げるのを良しとする。土地と市場に限りがある以上、地域にとっては前者のほうが良いに決まっているが、500万円稼げる人は100万円より良いだろうし、消費者にとっては、同じ物なら半額で買えるほうが良い。


 消費者が半額の物を好むなら、低コスト化を優先せざるを得ないが、それでは、あとの9人が食べていけなくなる。その対策として食品関連産業の誘致など高付加価値化とか、多角化を持ち出しているのか、本気でその可能性を信じているのか、提言の真意は僕には読みとれない。


 たいして3)水産業については
   ・沿岸漁業・地域
   ・沖合遠洋漁業・水産基地
   ・漁場・資源の回復、漁業者と民間企業との連携促進
にわけて語っている。


 沿岸漁業については「圏域ごとの漁港機能の集約・役割分担」が必要で「復旧・復興事業の必要性の高い漁港から事業に着手すべきである」と、読みようによっては一部は捨て去るという書き方だ。


 次の沖合遠洋漁業については、緊急的に復旧事業を実施し、漁業者と民間企業との連携促進」ともあわせ「漁業の構造改革」「漁業生産と一体的な流通加工業の効率化・高度化」を図ろうとしている。


 農業では曲がりなりにも六次産業化やグリーンツーリズムなど観光との連携という視点が柱の一つとされているが、水産業では僅かに「あわびなどの地元特産水産物を活かした6次産業化を視野に入れた流通加工体制を復興」と言及されているに過ぎない。


 小規模な漁業者が多く、漁業者単独での自力復旧が難しいという認識から、全面的な復旧は諦めざるを得ないということなのだろうが、本当にそうなのだろうか。三陸の漁業は、もっとしたたかな構造を持っているという人もいる。お魚の新鮮さへの要求は野菜や米以上にあるのではないか。


 農業に期待されている高付加価値化や多角化を漁業では早々に諦めなければならない理由は今ひとつ分からない。


(続く)