子育てとまちづくり

 昨日、京都大学の安寧の都市ユニットの公開講座で、『女性から見た子育て支援の現場とまちづくりとの接点』を聞いてきた。


 少子化対策は重要だ。
 無理矢理、埋めよ増やせよと迫っても無意味だろうし、海外の事例は、働く女性のサポートが大事だと教えてくれているという。ならば、迂遠だが、職住近接で通勤時間を減らすと言った「まちづくり」的な課題もあるのではないか?と以前から気になっていた。


 そんな話も出るのかな、と期待して聞きに行ったのだが、そういうことではなく、ファミリー・サポート・センター事業の説明だった。


 これは子育ての手伝いをしても良いという人たちと、一時的な手伝いを求める人々を結びつける事業で、国の交付金を得て、市町村が実施しているという。


 保育所が預かってくれない夕方の1時間とか、日曜日などに、子供の面倒をお願いできるのだという。
 預けた人は500〜800円ぐらいのペイを預かってくれた人に支払う。センターはお金のやり取りには関わらない。ただそのマッチングや保険、また研修や、サポートなどは事務局が担う。その費用は上記の補助金自治体の予算で賄われているという。


 全国で預けたいという会員が29万人、預かっても良いという人が8万4千人ほど登録しているそうだ。


 なかなか良い活動だとは思うのだが、なぜ、これが「まちづくり」なのだろうか?


 講師の高木陽子さんは、第一に、預ける人と、預かる人の間で、仕事とか、ボランティアの関係を超えたつながりが出来ることを上げておられた。


 預けるお母さんにとっては、単にベビーシッターを安く頼めるというだけではなく、抱えている気持ちを理解してくれる人、経験を学べる人ができ、地域が見守ってくれるという安心感が得られる。
 預かったあげる人たちは、育てる喜びを分かち合え、また自分の経験を役立てることができる。
 そうすることで地域の人と人のつながりを構築できるという。


 逆の面から見るとファミリー・サポート・センターの活動は、地域資源がなくては出来ない。
 預かる人たちはもちろん、彼らをサポートする専門家も、近場の人たちでないとやっていけない。東京で組み立てて地域に派遣するといった形ではできないのだという。
 そういう意味でもまちづくりだという訳だ。


 こういうことが「まちづくり」と言われるのを聞いていると、都市計画や建築からまちづくりを発想してきた僕たちよりも、世の中はずっと先を行っているのかもしれないという気がしてくる。
 それは、やはり人と人を繋ぎなおす仕事をしている山崎亮さんの『コミュニティデザイン』が話題となることと軌を一にしているのかもしれない。