谷中散策(2)

 昨日に引き続き2月の谷中散策の報告。




 次は谷中霊園に向かう道とお店とお茶屋


 お茶屋はお墓参りの人にお線香やお花などを提供できるように、明治7年の開園当時誘致されたものだという。だから当時からの老舗が多い。
 花屋はそれ以前からの明治3年創業、店舗の町家は国登録文化財である。


 一方、谷中霊園の向こうには超高層マンションが二本立ち上がっている。



 


 こちらは三崎坂にあるマンション。住民が反対するだけではなく、自らをも縛る建築協定を結ぶことで、ライオンズマンションも納得し、協定に参加して現在の形になったことで著名なマンションだ。当初計画は9階建てだったが、6階建て(通り側は4階建て)となり、1階には地域に開放された施設も設けられたという。


 右の写真は裏手の墓地越しに眺めたもの。
 椎原さんは「墓地側からこんなにはっきり見えるとは建ってから気づいた。RCのマンションに勾配屋根をつけるのは如何なものかという議論もあったが、屋根は大事だと思った」そうだ。



 


 下の左はヒマラヤ杉のある辻。辻の三方にお寺が集まっていて、最後のひとつ方にみかどパンというお店がある。

 昔『まち歩きガイド東京』を作ったときは、地図に従って、王林寺の参道脇から小径に入り、急な坂を上ってここにたどり着いた。なにしろ細い坂を通ってくるので異世界に出たような感じだったのを覚えている。


 立派なヒマラヤ杉だが、椎原さんによると30年ほど前の植木がここまで成長したのだそうだ。


 右の写真はアランさんのアトリエの玄関。左の写真の左奥にある。

 取り壊されるお寺から部品をもらったそうだが、『まち歩きガイド東京』の時は、この部分はなく、内側のガラス戸がむき出しだった。その内側のガラス戸と、この装飾の間をシャッターが下ろせるそうだが、あとちょっと寸法が違ったら、そんな芸当はできなかったという。これは仏様の思し召しだ!という感じで即決して取り付けられたそうだ。


 アランさんはここで日本画を描かれている。


 ビデオで制作風景を流しておられたが、なんでも訪ねてきた人が「誰がつくっているのですか?」なんて聞くので、聞かなくても分かるようにとのことだった



 



 その後、スカイザバスハウスでの現代美術の展示を見て、最後はカヤバ珈琲に連れて行ってもらった。ここもたいとう歴史都市研究会が借りて、利活用している建物で、建築の雑誌にも紹介されている。

 撮影に来た新建築のカメラマンが「これからはリノベーションですよね」と言っていたとか。なかなか良い感じのお店だった。

 椎原さんおすすめの谷中ジンジャーもタマゴサンドも美味しかった。


 ところで、市田邸のあるあたりから、旧吉田屋酒店を通り、初音の道を通っていく道と、三崎坂の道の上に、都市計画道路が計画されている。なんでも関東震災後、昭和初期からの計画で、100年経った今でも宙ぶらりんのまま残っているという。

 その都市計画道路をどうするのか。今も地道にワークショップ等が続けられ、地元の合意形成に汗が流されている。


 だが、その宙ぶらりんの都市計画道路のおかげで、建築規制がかかり、町並みが残されているという側面もあるようだ。とくに間間間のある初音の道は、ヒューマンスケールのままで残されている。だから計画を見直し、そのかわりヒューマンスケールを損なわないように建築のルールを導入したいと椎原さんは言っていた。


 台東区は防災に熱心で、不燃化率の向上にも力を入れているそうで、丘の麓のほうでは密集事業も行われている。安全・防災のためには、決まっている都市計画道路を取りやめるという決断は難しいのだそうだが、近年は区主催の見直しワークショップも折々開催されている。今さら道路拡幅もないだろう。なんとか知恵を絞って、ヒューマンなスケールを壊さないようにしてもらいたい。


 追:


 谷中は震災で若干の被害があったものの、椎原さんたちは地道に、息長い活動を継続されています。
 この日、下見をさせていただいたセミナーも4月7日に無事終了。
 その折に椎原さんにお願いしたインタビューを下記で公開中。
http://www.gakugei-pub.jp/higasi/i005si.htm


(おわり)


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