古池嘉和『地域の産業・文化と観光まちづくり』出版(1)

いよいよ出版

 10月15日に紹介した古池嘉和さんの観光振興論、書名をどうしようか悩んでいると書いたが、『地域の産業・文化と観光まちづくり〜創造性を育むツーリズム』として1月1日に発売した。


 10月15日には、「この本の狙いは決まっている」「地域経済において観光が果たすべき意義と役割を考えること。それは広い意味での産業興しであり、それに応えるのは広い意味での創造産業だということだ」と書いた。この書名でその意をくみ取って頂けるだろうか。

池上惇さんへのインタビュー〜観光とは〜


 僕が読んだ原稿の段階ではなかったが、古池さんによるインタビューが幾つか加わっている。
 そのなかの一人、池上惇さんへのインタビューを紹介しよう。


 古池さんがまず、都市と農村との関係について尋ねると、池上さんは、「観光を中心とした人の移動と交流が実現した今日では、来客と地元の交流の場に、地元の物産・観賞・サービスなどを提供する地域内生産が可能になってきた」ことを指摘する。


 そして「それは、地域の文化資源の見直しや、ものづくり体験などを通して、人びとが現実の暮らしの中に文化や新しい習慣を取り入れていくプロセスでもある」。


 だから「観光振興を単に産業の振興として捉えるのではなく、景観や文化の固有価値を再発見し、さらに技術、芸術や文化などを含めた総合的で質の高い政策として考えていくことが必要になる」と語られている。


 これは、この本のテーマであり、言いたかったことを凝縮している言葉だ。
 池上さんは「文化経済学」の泰斗であり、小規模ながら「文化政策まちづくり大学院大学」を設立しようと奔走されているエネルギッシュな方だ。さすが、本質をズバッと言われる。

池上惇さんへのインタビュー〜つながりとは〜


 続いて古池さんが、農村における結のようなつながりを現代的に再生して訪問客を暖かく迎えることが必要では、と問いかけると、結もつながりの情報ではあるが、マイナスの価値観をもって悪用すると村八分など人を排除する封建的支配になりかねないと、指摘される。


 コミュニティが崩壊し人の繋がりが失われたことを嘆くあまり、マイナス面を忘れてノスタルジックな思いにひたる言説が多いが、この点は重要だ。


 池上さんは続いて「近代的な人間関係のなかで、自由を前提とした上での思いやりというつながりの価値を加えれば相互信頼に発展する」とされるが、これは11月18日に紹介した広井良典さんの議論にも通じところがあるだろう。


 明日も池上さんのインタビューを紹介しながら、商品化について考えみたい。


続く


○関連情報
古池嘉和(2011.01.14、京都)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1101koike/index.htm


古池嘉和氏インタビュー
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/010koike/index.htm


○アマゾンリンク


古池嘉和著『地域の産業・文化と観光まちづくり―創造性を育むツーリズム