足立基治『シャッター通り再生計画』(3)


観光による活性化

 取り上げられたこれらの事例は、県庁所在地を除くと観光で著名な街だ。
 豊後高田と長浜、温泉町でもある鳴子町輪島市はもちろん、八戸もみろく横丁やB級グルメ、市場など食旅で注目されている。


 確かに観光は大きな要素だと明言されているが、そうはいっても観光に適した街と、そうでない街があると書かれている割には、観光で成功している街の事例が多いのは、ちょっと物足りないところだ。


 また、足立さんは観光施策のターゲットには日帰り観光客、宿泊観光客、地元観光客があるとされている。なかでも地元観光客の存在は無視できない、地元住民に地元の街を歩いてもらい、回遊性を高めるだけで街の雰囲気は大きく変わるとされ、非観光型の街にも有効な手法だとされている点は共感できるのだが、地元和歌山でのご自身の取り組み以外にはその点に触れられていないのは、残念な点だ。


 「今は観光に向いていない人口規模が小さな街では、地元の人たちをいつもの顧客と考えると同時に、観光客としてもとらえて、少し「おしゃれ(街並みをきれいにする)」をすればよい」(p176)と書かれているが、これからはむしろ逆だろうと思う。


 いつもの顧客が「おしゃれ」を求めないと言えるのだろうか。
 そんな顧客が通っているお店が、訪問者にとって魅力的だろうか。


 おしゃれという言葉はいつも当てはまるとは限らないだろうが、地元の人たちが暮らしを満喫している様子が、その街の文化であり魅力になる。


 足立さんも同じ事を言いたいのかもしれないが、観光という言葉が「よそに行って、その国の光を見る」「よそから来てもらって、光を見てもらう」という枠にかたどられているため、地元観光、日常観光といっても、ついつい従来の意味での観光地化と話がゴッチャになってしまいがちだ。


 とりわけ「観光地化」といった言葉は誤解されるのではないか。
 できれば、もっと新しい言葉が欲しい。


 なお観光客と市民のアマルガム化については宗田好史さんの『創造都市のための観光振興』を見て欲しい。


(おわり)


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足立基治『シャッター通り再生計画―明日からはじめる活性化の極意


宗田好史『創造都市のための観光振興