足立基治『シャッター通り再生計画』(2)


 12月9日に紹介した本をようやく読み終えた。
 足立さんは和歌山大学経済学部の先生で、和歌山市中心市街地活性化に取り組み、オープンカフェやレンタルカフェの試みを成功させた人だ。

 その再生計画の枠組みは三つのSにある。

三つのS

 第一のSはセンチメンタル価値を生かす。地域性を重視した街の個性の創造だ。


 第二のSはSWOT分析と地域の遺伝子分類。前者は地域の状況診断を経営学の手法なども援用しながら冷静に行うこと。後者は人口規模と大都市との近接性、観光都市としての可能性、郊外店舗の影響としている。
 そして、それら四つの地域遺伝子を人口20万以上か以下か、大都市から2時間以内か以上か、観光面でアピールできるかできないかで区分し、2の三乗の八つの街のタイプを提案し、それらごとに需要層が異なることを指摘している。


 第三のSはリスク管理。これは今の時代なら、投資は方向転換が可能なように着実に段階を踏んで行うこと。
 なんだかリアルオプション価値とかいう難しげな話が書いてあったが、これも今慌ててつくると、つくらないという選択肢を失うことになる。だから早めにつくることで得られるかもしれない利益と、来年になってやっぱり止めておこうとできることによる利益を秤にかけろということだった。なお、なぜリスク管理がSで始まるのかは分からない。

四つの活性化策

 また活性化策を以下の四つに分類し、事例を紹介されている。


1)コンバージョン型再生策:大都市近郊で日帰り観光が期待できる街。
              予算は多少必要
              ○豊後高田、長浜など
2)再開発型再生策    :大きな商圏が期待できる街
              大規模な予算が必要
              ○高松市丸亀町など
3)現状維持型再生策   :予算がかけられない街
              ○八戸市宮城県鳴子町金沢市
4)行政主導型再生策   :中心市街地に顧客を誘導することに合意が
               得られやすい街。交通政策を伴う
              ○福島市、石川県輪島市など

続く


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足立基治『シャッター通り再生計画―明日からはじめる活性化の極意