トスカニーニのインターナショナル

 NHKでワグナー特集をやっていた。

 そのなかにトスカニーニが1944年に録画したヴェルディの「諸国民の賛歌」が入っていた。

 なんでもイタリア独立の頃、愛国者ヴェルディがのちにイタリア国歌となる「イタリアの同胞よ」を主軸に、当時イタリア独立に好意的だったフランスとイギリスの国歌を加えてつくった合唱曲を、トスカニーニ第二次世界大戦バージョンに作り替えたものだそうだ。

 当時、トスカニーニはイタリアからアメリカに亡命していた。ラジオ局RCAが彼のためにNBC交響楽団をつくるほど歓待していた。

 「イタリアの同胞よ」はアメリカから見れば敵国の国家なのだが、最初のフレーズが「裏切られた祖国よ」と変えられ、後はそのまま入っている。


 またフランスとイギリスに加え、アメリカの「星条旗よ永遠なれ」とソ連の当時の国家「インターナショナル」が入っていた。


 学生の頃、良く聞いた曲だが、オーケストラと堂々たる合唱団で聞いたのは初めて。重厚な感じだ。


 それにしても、国歌は生臭い。学生の頃、一部で革命歌としてうたわれていたインターナショナルよりフランス国歌のほうがよほど過激だ。



 映画「カサブランカ」でもドイツ人が機嫌良く「ラインの守り」をうたっているところに、ラズロに目配せされた楽団が「「ラ・マルセイエーズ」を演奏し、酒場が歌合戦になる場面がある。ドイツ人とデートしていたイヴォンヌまで涙ながらに歌うエキセントリックなシーンだ。


 ところで嫁さんはこのシーンを見たときにたまげたそうだ。
 なにしろ母校の校歌をドイツ人が歌っていたから。


 なぜか知らないが、このラインの守り、同志社とイェール大学の校歌にもなっているドイツの民謡。フランスとの国境紛争を背景とした愛国的な歌詞だそうだが、ナチの歌ではない。


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ヴェルディ・セット(この中にトスカニーニ版「諸国民の賛歌」が収録されている)


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