徳野貞雄『農村の幸せ、都会の幸せ』(2)


 『撤退の農村計画』を巡っても、農山村の定住意向が強いことが話題になっていた。


 身体が元気な内は問題ないのだが、動かなくなったら困る。そのとき、頼りにされているのは、やはり子供だという。しかしその子供がいつ帰って来るのかは分からない。


 そこで徳野さんが提案するのは、孫の誘拐作戦と、娘の離婚大作戦だ。

孫を誘拐する

 近隣に息子か娘夫婦がいたら、週末に孫を誘拐してしまおうと徳野さんは提案する。
 そして孫を懐かして、養子にとるのだという。


 あるいは、1年間ぐらい孫を山村留学と称して預かってしまう。


 冗談かと思うだろうが、実践した村があるという。山村留学の取り組みをしていた熊本県の小国町の江古尾集落では、他人の子を預かるのではなく、孫たちを呼び寄せた。
 それまで役員や活動のリーダーしか動いていなかった都市農村交流だが、このときは村中総出で歓迎した。


 お盆になっても子どもたちが帰らないと、今まで寄りつきもしなかった息子や娘が子供を迎えに来る。それでも帰らずに夏休み中、残った子もいたそうだ。徳野さんがお年寄りに感想を聞くと「疲れた、金がかかった」、だけど「来年も絶対にやる」とのことだった。
 それ以後村づくりのやり方がガラッと変わったという。

娘の離婚大作戦


 昨今、離婚が増えている。
 ということは、農村から都会にきて結婚した女性の離婚も増えていることになる。
 そして、離婚した彼女たちは結構、農村に帰るのだそうだ。
 「農家だから、住む場所と食べる心配はなく、子どもものびのびとできるだろう。そして自分も手伝うことがたくさんあるだろう・・・・今は一息つける」ということらしい。


 だから、と徳野さんは言う。「街に行った嫁を早く夫婦別れさせて、孫と一緒に連れ戻せ! あんたらがいちばん欲しいのは、婿じゃなくて娘と孫やろ!」。


 そんな親の都合で夫婦別れさせられるなんて、たまらんなあ。
 だいいち、それじゃ都会の男は種馬か!?。


(続く)


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林 直樹、齋藤 晋編著『撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編