徳野貞雄『農村の幸せ、都会の幸せ』(1)
今の日本は1500年間続いた「自分の食は自分でつくる」という安定した暮らしが変わってしまい、不安に駆られているのではないか、という時間的スケールの大きな問いかけから始まる真面目な本だ。
だから、この本のごく一部なのだが、花嫁作戦の話が面白かったので、紹介しよう。
夫婦別姓で農村再生
まず花嫁問題。実は35歳以上の男性、30歳以上の女性で未婚率の高いのは都市部なのだそうだ。なのに、都市部では若者の未婚非婚問題と言われ、農村部ではなぜ花嫁問題なのか?。それは農村部では家を継ぐために結婚したいと思っている男はいるのに、相手になる女性がいないからだ。
ところが農山村の役場や農協には未婚女性が結構いる。彼女たちも結婚できないで困っている。なぜか。婿を取りたいのだが、なり手がいないからだ。
なぜ、こんなミスマッチが起こるかというと、男が家を継ぐもの、例外は入り婿だけなどと考えているからだ。
農村に残っている長男のところに一人娘が嫁にいくと、財産が相手の家にとられてしまう。だから嫁にはやらない。まして農村に残った長男が入り婿するわけがない。次男でも難しい。
それなら夫婦別姓とし、嫁さんの実家の財産は嫁さんだけが継ぐようにすれば良い。娘に子供ができたら、一人ずつ分け合うとかすれば良いと言うわけだ。
男女共同参画社会からの夫婦別姓運動と、農村再生のための夫婦別姓運動が手をつなぐべしと徳野さんは言う。頭の固い保守系の政治家は、日本の伝統を守るなんて言いながら、伝統が依拠する農村を壊している。
だいいち、直系なんかに拘れるようになったのは、子供の死亡率が下がった明治以降のことなのだそうだ。だから、もっとフレキシブルに考えれば良いのだと徳野さんは言う。
夫婦愛で農村再生
徳野さんのところの女子学生が農村に調査にいくと、よってたかって「嫁に来んね」と言われるそうだ。彼女の人間性を評価しているのではなく、ただ女性だから嫁に来いという。それがイヤと言われてしまうという。
また田舎に帰らない女性に聞くと故郷は好きだし、お父さんもお母さんも好きだけど、「お父さんとお母さんの夫婦関係は嫌い」なのだそうだ。
そこで徳野さんはラブラブ夫婦で農村再生を!と提案される。
日本では都会でもラブラブを表現する夫婦は少ない。ならば過剰なぐらいに表現してやろう。
この話を聞いた和田芳治さんは、「それもらった」と言ってカナダのツアーに奥さんを連れて行き、「これが私の家内の和子です。いい女でしょ。私は惚れています」とラブラブを徹底的にやったのだそうだ。
ただし、それで花嫁がゲットできる村になったのかどうかまでは書かれていない。
僕の連れ合いに言わせると、「そういうわざとらしいのがイヤ」なのだそうだが、果たしてどうだろう。
若夫婦のラブラブで農村再生
次の手は新妻の友達大作戦。
運良くお嫁さんをゲットできたら、うんと幸せにして、子供ができたときにでも都会から友達を呼んでもらう。そのとき、男一人じゃなんだからと、旦那の友達も呼んでおく。そこでラブラブを見せつける。
なお、この際、都会からというより、近隣の市町村からがコツだという。
なぜなら、通婚圏は車で1時間以内が多く、遠距離恋愛は成就しにくいからだとか。
徳野さんのアイデア、事例紹介はまだまだ続くのだが、まあ、こんなところで止めておこう。
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