コミュニティ・ビジネスとソーシャル・ビジネス(3)

コミュニティ・ビジネスは常にソーシャル・ビジネスか?

 コミュニティ・ビジネスが、常にソーシャル・ビジネスと重なるかというと、これも疑問がある。
 たとえば農家のおばさんたちが自律的に取り組んでいる直売所は、地域密着の小さな商売だし、地域の雇用や経済循環にプラスという意味でも立派なコミュニティ・ビジネスだ。


 だが、そこにあえてソーシャルな意味づけが必要だろうか。
 小田桐さんが書いているように、年間50万とか100万円の自分のお金を稼ぎたいということが、大きな動機であったとしても、いっこうに構わないと思う。


 それが有機農業のように社会的な意義がなければダメなんだという人もいるし、それはそのほうが意味は大きいと思うが、そうでなければダメというのも狭すぎると思う。この場合、お金を稼ぎたいという個益と、安全でおいしいものを提供し、提供されるという共益と、農を守り、ひいては国土を守るという公益が一致しているのだから、それで良いじゃないか。


 また、集落が一体になってとか、せめて数人のグループで共同でなければコミュニティ・ビジネスとは言わない、という人もいるが、それもどうだろう。一人でもできると言うほうが、明るいじゃないか、という気がする。


 まあ、それはそうだけど、大義名分というものが大事だという人がいた。
 退職して悠々自適の人が、地域で小さな商売をするとき、小商いをやっていますというより、それが地域の課題を解決するためのコミュニティ・ビジネスをやっています、のほうがかっこうが良いと言うわけだ。


 なるほど、それもそうか。
 行政も雑貨屋さん育成事業より、コミュニティ・マーケット育成事業のほうが、なんとなくお金を出しやすいのかもしれない。


(おわり)


○講演会『コミュニティビジネス入門講座』
講師:風見正三・木下 斉、2010年11月7日
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1011CB/report.htm


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風見正三、山口浩平編著、木下斉ほか著『コミュニティビジネス入門―地域市民の社会的事業


細内信孝『新版 コミュニティ・ビジネス