コミュニティ・ビジネスとソーシャル・ビジネス(2)
ソーシャル・ビジネスと「三方良し」の企業倫理は一緒か?
昨日は社会性のあるビジネスがソーシャル・ビジネスだと言った。
だが『目に見えない資本主義』で紹介したように、日本型経営に「本業を通して社会に貢献しよう」「売り手良し、買い手良し、世間良し」の「三方良し」といった倫理があったのだとすれば、これは社会的企業ではないのだろうか。
そんなのは建前で、本当は儲け第一主義じゃないか、というのももっともで、そうでなければ公害問題も、派遣切りも起きなかっただろうが、働いている一人一人に、「お客さんの喜ぶ顔がみたい」といった気持ちがあることも事実だろう。
それはCSRなんかを声高に叫ぶよりも、よっぽど大事なことだと思う。
しかしソーシャル・ビジネスは、「三法良し」と同じではない。
グローバル化した世界を前提に、地域の課題、社会の課題に正面から取り組もうという積極的な意志が込められている。
だが、僕はより重要な点として、組織のあり方を上げたい。
いくら働く人たちが「三方良し」の気持ちを持っていても、昔のように丁稚奉公を強いるような組織では意味がないということだ。
これは、当たり前のことだとも言えるが、かつて民主主義をうたう組織がもっとも非民主的であったとか、解放を唱えた組織がもっとも非人間的であったとか、結構、苦い歴史がある。熱狂的な宗教も、そんな例じゃないだろうか。
ソーシャル・ビジネスを名乗るなら、まずは会社なりNPOのあり方をソーシャルにすること。それが大事じゃないかと思うが、いかがだろうか。
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講師:風見正三・木下 斉、2010年11月7日
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風見正三、山口浩平編著、木下斉ほか著『コミュニティビジネス入門―地域市民の社会的事業』