井田徹治『生物多様性とは何か』(2)

生物多様性の重要性

 もちろん、1千万〜1億とも言われる生物種のなかには、いまは知られていなくても、将来とても有用になるものがあるかもしれない。生物種がガンガン減ってしまえば、その可能性は少なくなる。


 また環境の激変があったとき、生き残るためには多様性が必要だということもあるだろう。『生物多様性とは何か』によれば、この6億年ほどの間にで生物の大絶滅は5回も起こっているという。それぞれ、生物種の7割から8割が失われたという。
 このとき、恐竜をはじめ、多くの種が絶滅した。


 この本には書かれていないが、それでも生物が死に絶えなかったのは、様々な生物がいたからではないか。


 今、人間が生物種を大絶滅に追い込みつつある。
 それは飛行機からリベットが抜け落ちていくようなもので、一本一本はどうということはなくても、どこかで大事故を引き起こすかもしれないという。


 あるいはキーストーン種が失われると、多大な影響が生態系に及ぶという考え方もある。
 たとえば日本オオカミが絶滅し、ハンターもすくなくなった今、鹿がやたらに増えて、木が食い荒らされている。このキーストーン種は、生態系のなかで食物連鎖の頂点に建つ者であることが多いそうだ。たとえばオオカミがいれば、オオカミが住む森林の生態系や生物多様性がきちんと残っていることの証左だという。


 だが、オオカミが出没したら恐いよなあ〜。
 いて欲しくもあり、いて欲しくはなし、という感じだ。


 ところで、キーストーン種がしっかりしていれば安心の指標だとすると、最大最強の捕食者である人間が良ければ、人間がいる生態系が守られているということなのだろうか。それとも逆に、地球の生態系が壊れていったら、人間がいずれ生きていけなくなるのだろうか。


 考えれば、考えるほど奥が深い。

続く


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井田徹治『生物多様性とは何か (岩波新書)