井田徹治『生物多様性とは何か』(1)


 生物多様性条約締約国会議が名古屋で開かれたので、僕たちも林まゆみさんの『生物多様性をめざすまちづくり』を出し、セミナーも開いた。
 だが、正確には知らないぞ、というわけで読んでみた。

生物多様性と生態系サービス

 生物多様性の重要性については、生物多様性が支えている生態系サービスが人間に大きな価値を提供してくれているからだと説かれている。それは、四つの価値にまとめられている。


 一つ目は供給サービス。これは木材の昔からのものから、遺伝子資源のように最近になって脚光を浴びている物まで、含まれる。


 二つ目は環境調整機能。これは保水機能のように災害防止と直結するものから、二酸化炭素や化学物質を吸収する機能、鳥による害虫のコントロールまで含まれる。


 三つ目は基盤サービス。光合成や栄養分の循環、受粉や種子散布だ。
 そして最後が文化的サービス。美しい自然、おいしい食べ物が、多くの詩歌や絵画、彫刻を生み出してきた。


 これらは、なるほど大切に違いないが、その恵が単純な生物層からでは少ない。だから多様性が大切なのかどうかということが、今ひとつ分からない。
 人間の活動で自然が圧迫されていく、なくなっていくのは良くないが、外来種に土地の固有種がやっつけられてしまうのは、そんなに悪いことなのだろうか。


 琵琶湖でも外来種にやっつけられてフナが少なくなっているという。フナ寿司がピンチと聞くと、それは大変だとは思うが、ブラックバスだって必死に生きているんだろうし、100年もすれば名物料理に生まれ変わるか知れないじゃないか。


 人間がいなくても、ずっとスピードは遅いだろうが、外来種はやってくる。そんなに目くじらを立てることなのだろうか?

続く

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