藻谷浩介「丸一日・中心市街地活性化塾」(2)

中心市街地はなぜ必要か

 今回、改めてお話しを聞いて、中心市街地とは単なる繁華街でも商業地区でもなく、人が雑居し、雑踏があり、それゆえに個人が大資本に反転攻勢できる場だという話しが印象的だった。


 藻谷さんによればアメリカの中心市街地の再生例では、「実はナショナルチェーンしか入っていないケースが極めて多い」のだそうだ。
 長坂さんが紹介してくれたノッティンガムの中心市街地も、そうだという。


 まあ、これは表通りではしょうがないのかもしれない。藻谷さんがセミナーで紹介した成功例のなかでも、たとえば神戸旧居留地のブランド街のように、ナショナルどころか、グローバルなブランドがあってこそという例もある。
 京都の烏丸四条にできて今のところちょっと評判が良いKOTOChikaというショッピング街にも、無名の個人が挑戦しているようなお店はない。


 宗田さん流に言えば、そういう一流の路面店が集積する表通りの背後に、駆け出しの、それもその店にしかない品物を手づくりしているようなブランド予備軍を、どれだけ育てられるかが、その街の本当の強さなのだろう。(参照:宗田好史『にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり―歴史的景観の再生と商業政策学芸出版社、2001)。
 あるいは、物販よりも、飲食店や美容室のように最後は人間の腕で勝負という職種のほうが、勝負に出やすいのかもしれない。宗田さんによれば京都のまちなかの流れを変えたのもそういうお店だし、とりわけ町家を生かした飲食店は時代の流れをうまく掴んだようだ(参照:宗田好史『中心市街地の創造力』)。


 反転攻勢というと、大資本につぶされた商店主が再起を図るという臭いがするが、もっと大きく言えば、就職からはじき飛ばされ、あるいはせっかく就職してもなじめずに退職してしまった若者たちが、自らの価値を取り戻せる場所の一つだとも言える。


 バンバン儲ける成功者のお店、ナショナルはお店ばかりではなく、まして高い賃料が払えるピンク携帯屋さんだけではなく、たいして儲からないけど個性的で面白いという自己実現型の店を包摂できる裏通り、路地も含めた中心市街地こそ、街の宝だ。


(続く)

○執筆中の藻谷さんへメッセージを!
 本セミナーをベースとした原稿を、現在、校正頂いています。
 校正中の藻谷さんへの激励のメッセージは下記から。


 「丸一日・中心市街地活性化塾・藻谷さんにメッセージを!


○ 追:11.26セミナー『オオクボ 都市の力』
 稲葉さんの『オオクボ 都市の力』も、まさに雑居し、雑踏する街の力を描いた本だ。11月2日にも書いたので繰り返さないが、多くの中心市街地が沈滞しているのは、硬直し、多様性を失っているからではないかと思う。
 26日の稲葉さんのセミナーでは、そのあたりにも敷衍して議論したい。