藻谷浩介「丸一日・中心市街地活性化塾」(1)
10月26日の藻谷さんのセミナーのテープ起こしの整理がようやく終わった。
『デフレの正体』が今年は大ヒットしたそうだが、中心市街地活性化の辛辣な論客としても知られている。7年ほど前に本づくりの相談をしたときから、その主張はほとんど変わっていない。
街をダメにしているのは高地価への妄想
すなわち、「戦後の地価高騰の夢を忘れられない、当事者意識のない地権者が土地を塩漬けにしているのが元凶」ということだ。人口減少時代にはいり、しかも高齢者ばかりが増えて行き、事務所も住宅も余っているというのに、いまだに容積率を上げれば景気が良くなると言った妄想にとりつかれた為政者と地権者が街をダメにしている、という。
最初に10年ほど前の講演録を読んだとき、「容積率を上げて建物の供給を増やしたら地価が上がる」というのは、「米の値段が下がって困るなあ、よしっ、田んぼを二階建てにしてやるぞ」というような話だと書かれていて、目からウロコが落ちる感覚だった。
お米の収量を倍にするような発明があったら、最上級のお米は2倍売れて儲かるだろうが、ほかの普通のお米は半分残ってしまう。捨てるしかなくなる。だいたい不況カルテルという言葉はあるが、不況増産なんてのは聞いたことがない。なのに、あえて不況増産に走るのは、最上級のお米(東京の一部の土地等)を救済するため以外に考えられない。そんな馬鹿な政策が通るのは、土地持ちが、自分の土地も東京の一等地と同様に美味しいと勘違いしているからだろう。
実に単純明快な話しなんだが、人は見たくない現実はみない。まして、世の中、理屈通りには動かない。
7年前の相談がスムースに本になっていたら、出版の頃に、ちょうどミニバブルの始まりにぶち当たっていただろう。これから地価は下がるぞ!、値上がりを待って塩漬けにしていたって良いことないぞ、テナントの商売が成り立つところまで賃料をさげて「損して得を取れ!」という藻谷さんの主張は、霞んでしまったかもしれない。
そういう意味では、7年前の企画が頓挫して、今、リターンマッチを挑む方が良かったのかもしれない。
○執筆中の藻谷さんへメッセージを!
本セミナーをベースとした原稿を、現在、校正頂いています。
校正中の藻谷さんへの激励のメッセージは下記から。
○参考資料
・第173回都市経営フォーラム「デフレ時代と中心市街地 」
・藻谷浩介『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)』
・藻谷浩介『実測!ニッポンの地域力』