太田肇『「見せかけの勤勉」の正体』(1)



 ビジネス書はあまり読まないが、タイトルにひかれて買ってしまった。
 無茶苦茶、面白いというか、とんでもない例も紹介されていた。

管理強化の行き着く先

 この10年ほど、成果主義による管理強化が流行っていて、挙げ句の果て、「社員が外部にファックスを送るときは複数の上司の立ち会いのもと、番号を復唱させているところや、メールの送信をいちいちチェックしている会社もある」(p69)という。


 たしかに僕も、ファックスを送ると、十回に一回ぐらいは、あやまって電話のほうに送ってしまう。復唱ぐらいしたほうが良いのかもしれないが、だからって複数の人に番号を確認して貰ったら、アホか!と言われてしまうだろう。
 仮に間違えても、まあ、どうってことはないからだ。


 またメールでは、結構多いのが、件名を間違えることだ。
 過去のメールを取り出して内容を書き換えて再送信するのだが、本文を書き終わると、書けた!という感じで送信ボタンを押してしまうので、件名をなおし忘れることが多い。


 だから横に座っていて、常々チェックしてくれたら有り難いが、そんな暇は人は社にはいない。


 世の中にはよほど暇な会社があるのだろうか。
 よく、そんなんで回っていくものだ。

パーフォーマンス残業

 パーフォーマンス残業という言葉があるという。
 成果主義なんだから、残業しようがしまいが、成果をあげれば良いようなものだが、世の中、そうではないという。


 もともと仕事の成果は単純に計れる物ではないうえに、日本のようにチームで仕事をする風土では、さらに個々人の成果を計ることは難しい。だから、頑張る人を高く評価することになる。
 しかし頑張りを客観的に評価することはもっと難しい。だから、「こんなに頑張っていますよ!」というパフォーマンスが必要になる。そのもっとも効果的な方法が残業なのだという。


 隣の奴が9時まで頑張るなら僕は10時まで頑張ります。そしたら私は11時まで頑張ります………。う〜ん。無限地獄だ。
 残業時間の多さで頑張り度、熱意を図るのは、あまりにも歪んでいる。


 僕は社のなかでももっとも残業や、自宅での仕事時間が多い一人だと思う。
 だから、自慢じゃないけど、残業すれば成果があがるわけではないことはよく知っている。単に要領が悪いだけ、集中力がないだけってことも良く分かっている。


 だが、弁解をさせて貰うなら、集中して仕事をすると成果が上がるとも限らないと思う。集中できずに余計なことを考えているうちに閃くこともあるし、ベッドのなかで閃いてメモしたことが成果につながったこともある。


 だいたい、集中していて、閃きが出るとは限らないじゃないか。

続く