学芸セミナー「広域計画と地域の持続可能性」(1)


 1ヶ月ほど前ですが、8月27日、標記のセミナーを行いました。
 参加者は16名と少なかったのですが、内容的には濃かったと思います。
 瀬田史彦、戸田敏行、福島茂さんには、遠方から手弁当でお越しいただき、感謝です。
 また、参加者の皆様にも感謝します。

広域計画と県境を越える連携

 広域計画は本で読んだことはあるが、実生活では見たことも聞いたこともない。
 だから、いったい何をやっているのか、それで生活がどう変わるのかが分かりにくい。


 だが、戸田さんが話された県境を越えた連携は分かりやすかった。
 たとえば、昔、徳川側についた藩が、明治新政府による廃藩置県のおりに分断されたため、もう一度、県境を越えて結びつこうとしているとか、合併で自治体が大きくなりすぎたため、むしろ県境を越えた隣の市のほうが身近になったというお話は、なるほど、だった。


 EUでは国境をまたぐ地域に着目したインターレグという制度もあるという。
 国と国の連携、県と県の連携を中心を結ぶ形ではなく、端を紡ぎ上げていくような形で考えられないかというお話は、心に響いた。なるほど地域主権になれば、近いところ、一体感があるところが県境をこえ、国境を越えて繋がるのは、自然なのだ、と感じた。

広域計画における活性化のイメージの変化(瀬田さんの報告)

 瀬田さんは1980年代の地域活性化から話を始められた。
 1980年代には人口増加や雇用拡大が目ざされたが、多くの場合、うまくいかなかった。その点については、外部の民間資本を導入しての大規模開発でも、地域特産品の開発を目ざした内発的発展でも、同じだ。
 人口も減っていく今、もうこんな目標はあり得ないのじゃないか。それはみんな、特に若い人は分かっている事じゃないかと瀬田さんは言われた。

 ではどのような活性化かというと「都市機能がそれなりに揃っている。そして豊かな生活環境を享受できる、弱者も安心して暮らせる、といったことがイメージされているのではないか」とのことだ。かつての熱い活性化に対してクールな活性化と名付けられている。

 また人口が増えていくときには有効だった、いかにサービスを効率的に供給するかに主眼をおいた供給圏としての広域政策は、もう守りに入っている。端的に言えば、新しい需要があまりない。今では、地方からあらゆるサービスが消えてしまわないように、中心市をつくって、そこが廻りを支援するといった後退戦の段階に入っているそうだ。

 一方、経済圏はグローバル化の影響で海外と取引するような部分もあれば、地産地消でクローズドにやっている部分もあり、非常に多様になっていて、この2つを同じ圏域で考えることが難しくなっているという。

 しかし、そうなると、元々のお題の「広域政策と地域活性化」は、どうなるのだろうか。守りの広域政策によるクールな活性化と、地域に拘らないグローバル戦略による熱い活性化に分かれてしまうのだろうか。


続く

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