「大正・三軒家 下町水辺の楽園ツアー」体験記
食旅セミナーも何とか無事終了。セミナーではマイクが不調だったり、資料が足りなくなったりの不手際もあった。ごめんなさい。
今日は、オプショナルツアー「大正・三軒家 下町水辺の楽園ツアー」を報告しよう。
今回のセミナーをどうするか、フードツーリズム研究会の例会のあと尾家先生とお話していたとき、「せっかく大阪でやるのだからまち歩きをつけたいね」という話になった。そのときちょうど泉英明さんが来られていたので、「君のところで引き受けてよ」「ついでにセミナーで報告もお願い」ということで決まったオプショナル・ツアーだ。
主催は泉さんも参加されているOSAKA旅めがね、参加費用はセミナーとのタイアップ企画ということで、普段より500円安くしていただいて2980円だ。
まずは始まる前のソーキそば
12時過ぎ、自宅を出て、大阪はJR環状線の大正駅に向かう。
ちょっと出るのが遅くなったので、京都でのランチを諦めて、着いてからの食事にした。
駅に着くと旅めがねの看板を抱えたお姉さんが立っている。挨拶をしてお薦めのお店を聞いていると泉さんが現れ、沖縄料理のお店「いちゃりば」を紹介してくれた。
さっそく行ってみる。
ちょっと本格的な良い感じの店で、ソーキそばを2人で食べる。
昔、たしか30年ほど前に沖縄で食べたときは、独特の臭みになじめなかったが、今日のソーキそばは臭みがなく、カルビもとろけるよう。連れも大満足だ。
帰りがけに「ポーク玉子のおにぎり」のPOPを見た連れが、これは何ですか?と店員さんにきくと「SPAM」ですという。「エッ? SPAM?」「そうSPAM」。
まったく話が通じない。「まるで外国みたい」と連れもご満悦。
大正橋
さて集合時間ギリギリに駅でツアーに合流。
案内人(エリアクルー)は古川章子さん。さっそく出発だ。
まずは大正橋に行く。ここは尻無川と木津川が十字に交差する川の交差点。
そこに架かっている大正橋は、この地域の発展の礎となった橋で、改築に際して、その喜びを表す三つのシンボルを埋め込んだという。
「それは何でしょう」。古川さんの問いに、連れが「鍵盤」と答える。
そして「メトロノーム」と高欄に書かれた「楽譜」。
「さて、これは何の曲でしょう。皆さん知っている曲ですよ」と言われても、五線譜が読めない。全員アウトかと思ったら、尾家さんが「喜びの歌!」と答えて面目を保った。
次の写真は大正橋の橋詰めからとった閘門の様子。普段はしまっているが、運良く船が出入りしている様子が見られた。
大正橋商店街、いちゃりば
大正橋商店街にある、常連客がベーゴマ大会を行っているという「火の来間」を外から眺めたあと、さきほどの「いちゃりば」に着く。
なんと、さっき不思議が解けなかった「ポーク玉子おにぎり」が一人に一個ずつ配られた。美味しそうだが、ソーキそばを食べたばかりで手が出ない。「持って帰って夜に食べても美味しいですよ」というので、ナップサックにしまう。
連れはさっそく店内を物色して、すっかり観光気分。もうお土産を買っている。
聞いてみると「SPAM」とは、迷惑メールのことではなく、アメリカのホーメル食品が販売するランチョンミートの缶詰のことで、アメリカではとても有名だそうだ。日本でも米軍基地の周辺では普及し、沖縄にはホーメルの子会社もあるという。
ただしウィッキペディアによればSPAMメールの語源はこのSPAMと関係があるらしい。比較的安価で賞味期限も長いことから、軍が採用し、今日もSPAM、明日もSPAM、飽き飽きしたぜ、と言われたらしい。さらに「空飛ぶモンティ・パイソン」の「スパムとスパムとスパムと…(執拗に繰り返し)…」とスパムを執拗に繰り返す「スパムの多い料理店」という作品を介して、メッセージを繰り返して何かを溢れさせるような迷惑行為を、ハッカー達がスパムと呼ぶようになったとのことだ。
尻無川の堤防に向かう
次は大正通をわたって尻無川の堤防に向かう。その先には海があるのだが、ここまでは船が上がってくることができる。だから昔は内地を行き交う貨物船の港として賑わい、船員宿や娯楽施設が無数にあったという。
そして今、往時の面影を微かにとどめる街に、水辺の新たな魅力を求めて酒飲みたちが集まっている。不思議な雰囲気のお店が、次々とできているという。
写真はかつての船乗りの宿、月の家旅館、そしていかにもツーが集まるという感じのBAR in。
ところで、この堤防上の道や店は、実は堤防の中にある。
だから高潮のときなどには、外側の街に水が溢れないように写真の防潮扉が閉められる。
泉さんによると、この先は埋立地だけれども、ここは明治以前からの土地だという。区画整理が行われたところは3mほど土地のかさ上げが行われたが、この付近は昔のママ。だから海抜0m以下となっているという。
そういう土地柄なので、水防団もしっかりしており、日本一といっても良いとのことだ。
さすが。地域の力が残っていると感心するが、堤防の中に残ったお店はどうなるのだろうか?
だいたい堤防のなかに道路やお店があるってアナーキーじゃないか。ますます好きになってしまいそうな街だ。
さて、その堤防のなかのお店の一つに入れて貰う。
なんだか海と船へのこだわりが凄い。昔、久しぶりに陸にあがった荒くれの船員さんが、女のもとにもゆかず、しぶくお酒を飲んでいる様子が目に浮かぶ。
建築家で、本を書いて頂いたり、コーポラティブマンションの購入や設計の時には側面から随分助けてくれた江川さんが来ていたが、写真のようにもうすっかりなじんでしまっていた。
カレーパン、みたらし団子、そしてホルモン
堤防を離れて街に向かうと、町なかに鉄の砲弾が埋め込まれている。
そして昔、船員さんたちが集まったという映画館の跡(下の右の写真)。まんなかの壁一枚が当時のものだという。
その先には女風呂と男風呂の境が低い壁しかないという第二大井湯。ただし、若い女性の利用は少ないということだった。
次は三泉商店街。
だいぶ寂れてしまった商店街だが、昔の写真が貼ってあったりして、往時を偲ばせている。
また大衆演劇のポスターが貼ってある。これはアンティックではない。本物だ。ちゃんと公演しているのだ。凄い!。
その商店街のなかでカレーパンを食べる。
なんでもカーテンかなにかのお店だったのだそうだが、旦那さんが工事などに専念するため店を閉めたので、奥さんがシャッターを下ろしたくないと、カレーショップを始めたのだそうだ。
そして、商店街の手づくりパン屋さんや、隣の福神漬けのお店とコラボレーションし、カレーパンを名物にしようと頑張っている。結構、美味しい。福神漬けがカレーパンに予め入っているのが不思議な食感だった。
さらに第六堂という大正6年創業の和菓子のお店。みたらし団子を食べる。甘い。
長坂さんはさらに3本も買っていた。「さめたら美味しくないんじゃない?」と聞くと、そうではない。さめても美味しいのだという。
店のおばちゃんは、注文してくれたら宅急便で送って明日には届けられる、インターネットのおかげで全国から注文が来るようになったと言っていた。
そして商店街の最後はホルモン焼きの「まっちゃん」。
渋いじいさんがホルモンを焼いている。100グラム150円。安い!。
夜になると勤め帰りの人でごった返すほどの人気だという。案内の古川さんもはまっているのだそうだ。
SUNSET 2117
そうこうしているうちに堤防に戻ってきた。
先ほど映画館跡や第二大井湯を見ながら川から遠ざかっていたのだが、カレーパンを食べたと、みたらし団子、ホルモンを食べているうちに川に戻ってきていたというわけだ。
川の近くからは京セラドームが見える。
未来的と言えば未来的な光景。連れはドームの「たてのり」禁止について蘊蓄を垂れていた。
そして最後は堤防沿いのSUNSET 2117。
2003年に、大阪ドームの対岸でリバーカフェの社会実験が行われたが、泉さんはその中心メンバーの一人だ。
この実験については、たとえば2004年度第1回都市環境デザインセミナー「ミニ社会実験:リバーカフェ」で泉さんと森山秀二さんが報告しているので、ご覧いただきたい。
その実験の目的は「1つはより多くの人に大阪の水辺の魅力を体験してもらうこと、 もう1つは水辺空間の利用についてのルールや道筋を提案し、 実現することによって、 今後、 民間のアイデアにより公共空間をうまく使っていくための道筋を見せる」ということだった。
だから管理当局とのややこしい交渉をこなし、合法的にリバーカフェを開くことにこだわった。その成果は、今、様々な形で民間に引き継がれ、魅力的な水辺の使い方が生まれはじめている。
そのときお世話になったのがSUNSET 2117の山崎さん。随分お世話になったと聞いているが、同時に泉さんの人生も変えてしまった。この出会いがなければ、彼は都市プランナー一筋だったかもしれないが、今では週に1日か2日は旅めがねで無給で働いているという。
そのSUNSET 2117で、最後のワンドリンクを楽しんで、ツアーは終わった。
江川さんはすっかり街に魅了されて、セミナーに出る気をなくしたようだ。きっと楽しい夜を過ごされたことだろう。
○OSAKA旅めがねHP
http://www.tabimegane.com/
○食旅セミナーHP
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1009yasu/index.htm