『人口減少時代における土地利用計画―都市周辺部の持続可能性を探る』(1)
都市の縮退と都市計画
最近、この話題ばかり書いているような気がするが、人口が減少し、都市が縮退し、過疎地では集落の消滅が危惧されている今、従来の都市の成長を制御することに主眼をおいた都市計画が大きく変わらなければならないことは明らかだろう。
その一つは従来から言われているコンパクトシティだ。
海道さんの『コンパクトシティ』(2001)、『コンパクトシティの計画とデザイン』(2007)をはじめ、何冊も関連書をだしてきた。
特に前者はジェンクス教授がコンパクトシティへの賛否両論を編纂した『コンパクトシティ〜持続可能な都市形態を求めて』(ジェンクスほか著、海藤清信訳、神戸大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク刊)に続いて海道さんが出したオリジナルで、市販の本としては初めてだったので、多くの人に読んでいただけた。
その後、国の政策も理念としてはコンパクトシティに移り、新中活法では、コンパクトシティが指向された。
だがコンパクトシティの優等生として、中活法の最初の認定を受け、また僕の本でも、たとえば『中心市街地活性化三法とまちづくり』などで紹介していた青森市の2009年4月の市長選で、なんとコンパクトシティが争点の一つになり、推進派の前市長が敗れてしまった。
だからなのか、コンパクトシティとして選択され、支援を集中して受ける街以外の、普通の街や郊外を、一体どうするのだということに焦点が移ってきた感がある。
本書は、市長選のずーと前から著者グループがとりまとめられていたものなのだが、結果的には、そういった見直し機運に正面から応える最初の本となっている。
本書の構成
本書は次の三部構成となっている。
3部は具体的に都市名をあげてのケーススタディなので違いが分かりやすいが、1部と2部は、前者が比較的大きな話、後者がやや具体の制度に近い所での話という仕分けだ。
目 次
第1部 持続可能な都市の形態と周辺部の課題
第2部 都市周辺部の土地利用計画制度の現状と課題
第3部 自治体による都市周辺部への新しい取り組み
さて、都市周辺部の持続可能性を土地利用計画から考えようというのが本書の狙いだが、果たしてどのような手助けが都市計画にできるのだろうか。
都市計画を教科書的に解説すれば、「土地利用規制」「都市計画事業」「都市施設」そして「都市計画税」である。土地利用については、今後10年で市街化すべき所を市街化区域とし、市街化を抑制すべきき区域を市街化調整区域とする。そして前者には下水道事業や道路、あるいは区画整理や再開発などの事業を集中し、後者は例外を除いて建築を抑制しようというものだ。
このどこにも、市街地が衰退していく、放棄地が出て荒れていくという事態は想定されていない。
言ってみれば徒手空拳で敵に立ち向かうようなものだけに、25もの力作がつまっている。とても紹介しきれないので、いくつか都市計画の現場に疎い僕にも書きやすいものを紹介させていただく。
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川上光彦・浦山益郎・飯田直彦+土地利用研究会 編著『人口減少時代における土地利用計画―都市周辺部の持続可能性を探る』
海藤清信『コンパクトシティ―持続可能な社会の都市像を求めて』
海道清信『コンパクトシティの計画とデザイン』
矢作弘、瀬田史彦編著『中心市街地活性化三法改正とまちづくり』