松竹大歌舞伎
今日は「連れ」に連れられて歌舞伎を琵琶湖ホールに見に行った。
本当は「連れ」は、南座でやっている海老蔵や玉三郎が出る「通し狂言 義経千本桜」に行きたかったらしいのだが、そちらは8000円ぐらい割安な生協の団体割引券に注文殺到。2度にわたって抽選で敗退。
そうこうしているうちに一番行きたい演目は正規料金でも手に入らなくなって、涙を呑んだらしい。
僕には分からないが京都に海老、玉が出てくるなんて滅多にないそうだ。
おそらく東京の歌舞伎座が閉じていることも関係しているのだろう。だから来年も、ちょっと豪華なメンバーが来てくれるかも、と慰めているのだが、そういうたびに却って悔しさが蘇ってくるらしい。
それはともあれ、今回、見に行ったのは全国公立文化施設協会主催の松竹大歌舞伎(西コース)。政府の補助なども受けながら、各地の公立ホールを巡業するという企画である。
演目は、下記の通り。
1)歌舞伎の見方(中村亀鶴)
2)鳴神(中村橋之助、中村扇雀)
3)俄獅子(中村橋之助、中村扇雀、中村亀鶴)
最近は能でもオペラでも初心者向けの公演では、解説に力を入れている。今日の「歌舞伎の見方」も観客を参加させたり、工夫されていた。
だけど、演目の解説がほとんどなかったのは残念。「プログラムを買え」と言っていたが、それはないだろうと思う。だいいち、今さら言われても休憩時間では読み切れない。
鳴神は今風にいうと美人破壊工作員(テロリスト・ビューティ)の物語。
帝の約束違反に怒り、雨をもたらす龍神を封じ込めてしまった鳴神上人のもとに送り込まれた雲の絶間姫は、乳をさわらせるなど、露骨な色仕掛けで鳴神上人を籠絡。結婚を餌に無理矢理酒を飲ませて意識不明にさせ、龍神を封じ込めていたしめ縄を切って逃亡。
目覚めた鳴神上人は怒り狂って姫の後を追う。これが後半の見せ場。
前半はともかく眠かった。
歌舞伎は能よりは分かりやすいというが、中途半端にリアルなので、やっぱり綺麗なお姉さんのはずが、厳つい顔というのはどうものめり込めない。
加えて、後半の怒り狂った鳴神上人はなかなか良いのだが、部下に当たり散らすだけで、肝心の姫を追おうとしない。さっ!いよいよこれから追跡だ!というところで幕。
消化不良の気分だ。
最後の俄獅子は歌舞伎舞踊なので筋もなにもない。
女形の中村扇雀が、鳴神よりは女らしく見えた。いよいよこれからクライマックスに入るのかな、というところでこちらも幕。
ところで何故、日本の古典にはカーテンコールがないのだろうか。
クラシックのようにやたら思わせぶりなのも時間の無駄という感じがするが、実際はいまいちだなと感じていても、拍手をしているとなんとなく素晴らしかったような気分になる。
「連れ」によると、最後は見栄を切っているのだから、わっと拍手で盛り上がる中、幕が下りるのだそうだが、今日は初心者が多かったので、あれれっと思っているうちに機を逸したのだそうだ。ちなみに欧米での公演の際には、ちゃんとカーテンコールを設けるとか。
というわけで、ちょっち欲求不満で外に出ると、大ホールでの氣志團の物品販売や公演に若い観客が集まってきていた。
歌舞伎を見に来ていた人たちより、はるかに「傾(かぶ)く」にふさわしい感じの気合いの入った衣装と化粧に身を包んでいた。
500年もたつと、こういうのもまた様式化し、古典になるのだろうか?。