『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』豪華二本立て
『食旅と観光まちづくり』
朝日(7月25日)の読書欄に「今週のビジネス書」という感じで大きく載っている。
評者は東短リサーチ取締役チーフエコノミストの加藤出さん。なんで証券だの金融だのが専門の人が観光まちづくりを取り上げてくれたのか分からないが、そういう時代なのだろうか。
日常生活に溶け込んでいる(喜多方の朝ラーのような)観光資源の原石を発見し。カタチにすることが重要だなど、要領よく本書の主張をまとめ、最後に海外の食通を日本に惹きつけてはどうかと提言している。
ともあれ、新聞に取り上げられるのは嬉しい。
美しい音楽と不倫と殺人
今日は、びわ湖ホールに行ってきた。ヴェリズモ・オペラ(リアリズム文芸運動歌劇)の傑作と言われる『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』の二本立て。
初心者や若者向けに、名作オペラをびわ湖ホール専属の合唱団のメンバーが演じてくれる「オペラへの招待」というシリーズだ。
背景についても最初に中村敬一さんの解説が付いていた。
その解説によると『カヴァレリア・ルスティカーナ』は実話を元にしているそうだ。
シチリアのヴィッツーニには、舞台となった教会や酒場、主人公のサントゥッツァや恋敵のローラのお家もばっちり残っているという。なおこの街は世界遺産だが、この話が関係があるのかどうかは知らない。
兵役帰りの若く貧しい男トゥリッドゥが帰ってみると、恋人のローラは馬車屋の亭主アルフィオと結婚してしまっている。腹いせにサントゥッツァをくどいて貞節を奪ってしまうが、それを知ったローラがちょっかいを出す。
亭主の留守を良いことにローラの家に泊まり込んだトゥリッドゥ。気づいたサントゥッツァが迫る。私を捨てるのか!?
欝陶しくなったトゥリッドゥはサントゥッツァを邪険にしてローラを追う。
いよいよ追いつめられたサントゥッツァは、ローラの亭主アルフィオにトゥリッドゥとローラの不倫を告げ口。
昔気質のアルフィオは決闘を申し込み、トゥリッドゥを殺してしまう。
だから邦題は『田舎の騎士道』だったそうだ。
この、どうしようもない不倫物語が、復活祭という敬虔で宗教的な雰囲気と、あまりに美しい叙情的な音楽で満たされている。
今日のプログラムの解説によると、「これはシチリアそのものを描いた物語です。このような話は、シチリアでは今でもよくある話です」とあるが、ホント? ウソだろう。
今日はサントゥッツァが良かった。
神をたたえる歌をうたっていても、どこか恨めしげなのが良い。
男を追い求め、求めきれなかったとき、思い切って復讐してしまう。
恋人の浮気を告げ口する軽はずみな女との解釈もあるようだが、今日のサントゥッツァは確信犯に見えた。
たいして、不倫をして、散々邪険にしたくせに、最後になってサントゥッツァを案じる男の身勝手さ。勝手に死ね!って感じだ。
だいいち、ヴィッツーニに残るローラの家はサントゥッツァの家の真ん前。見つかるだろう!それじゃ。
ワイフは、イタリアにはラブホテルはないのか!?と言っていた。
まあ、オペラの解釈なんて、その場の気分次第だから、他の人がどう感じたかは知らない。
こちらは不倫と二重殺人〜『道化師』
道化師も似たような不倫話。
それより、今日、ブライトンホテルの音楽会でもらった『イリス』のチラシが凄い。
作曲はカヴァレリア・ルスティカーナと同じくマスカーニ。蝶々夫人と同じく、ジャポニスム・オペラの一つ。
舞台は江戸時代の日本。田舎で盲目の父と住む娘イリス(あやめ)に遊び人で好色な大阪(人の名前です。念の為)が横恋慕。連れのずるがしこい京都(これも人名)と悪巧みをしてイリスをおびき出し、遊郭に売り飛ばす。
京都はイリスの自筆にみせかけ自分の意思で吉原に行くという手紙を書くが、それを読んだ父は激怒し、娘をおって吉原に行くが・・・というお話だそうだ。
井上道義の指揮・演出でセミステージ形式で来年の2月20日に京都コンサートホールで上演される。
びわ湖ホール
3000円で800人収容の中ホールで金曜日と日曜日の2日の公演。今日はチケット完売だった。
オペラにしては安いためか、若い人、それもクラシック系とは見えない人が目立った。
このびわ湖ホール、滋賀県のお荷物と言われることもある。
今日の公演の主役だった声楽アンサンブルなど、若い人たちを育てるなど、頑張っていると思うのだが、なにしろオペラなんて市場が小さい。
特に大ホールの音は立派だけど、立地が今ひとつで、殺風景。
大津駅から歩いてゆくと20〜30分かかるのが痛い。
大阪の文化政策の大先生が、「あんなところにゆくと数万円のチケット代と宿泊費で5万、十万かかってしまう、誰がいきますか?」と言っていたこともある。
実際には昼の公演が多いし、大阪駅までなら1時間ほどだ。道州制なんて言っているけど、大阪の人は滋賀県なんか眼中にないのだろう。
一方、2年ほどまえに運営費を1億円ほど削るべきかどうかで、滋賀県議会で揉めたことがある。そのときに反対派の議員が、「京都や大阪の人は滋賀県民の血税で楽しんでいるのだということを自覚してほしい」と言っていた。
そうなのか。すみません。