『オーケストラ』


 連休のなか日、まち中のシネコンに「オーケストラ」を見に行った。
 写真は最近出来た路上駐輪場。昔はもう少し遠い場所で1日150円だったが、これが出来て映画館等にも近くなり、30分以内なら無料、3時間以内なら100円と短時間の利用は安くなった。市民グループが仕掛けた社会実験が発端と聞いている。頑張れ!。
 肝心の映画だが、ボリショイのファンとしては、そんなのありって展開だ。
 まず、今のボリショイ管弦楽団はパリに出したら大恥をかくほど下手という設定。
 そこまで言わないでも良いじゃないか、ボリショイは名誉毀損で訴えたら、と思うが、そうでもないのだろうか。
 またお話の発端になったボリショイ管弦楽団で、ブレジネフ政権によってユダヤ人が排斥され、彼らをかばったアンドレイのようなロシア人が解雇されたのは、本当にあったことらしい。スターリン時代ならともかく、1980年代初頭に、まだそんな露骨なことをやっていたとは信じられないのだが、HPではそうなっていた。
 この時、解雇され今は清掃員をしている天才指揮者アンドレイが、ちょっとしたきっかけで、昔の仲間と偽ボリショイ管弦楽団をつくってパリに乗り込むという話。チャイコのバイオリン協奏曲一番のソリストに指名した美人バイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケは、実にいわくありげで、これは天才指揮者の隠し子か?。今さら真実を告げてどうなる、絶対に言わないでと美人バイオリニストの母代わりのミュー・ミューは言う。どうなる。ハラハラという展開だ。
 話は「のだめ」以上にハチャメチャ。30年間現役を離れ、なかには楽器も売り払った団員もいるのに、必死の練習どころか、ソリストとのリハーサルもさぼって遊びまくったり違法就労したりのし放題。「レアのために集まれ」というメールで呼び出され開幕直前まで密売をしていた団員が最後に駆けつけて無事開演するが、音は総崩れ。しかし、アンヌの熱情的なバイオリンが始まると、とたんにシャンとして、素晴らしい演奏に変わる。
 アンヌは天才指揮者の隠し子か?というのは邪推だった。アンドレイがチャイコに熱中していたとき、ともに音楽にのめり込んだのがソリストのレア。ところがレアも夫もユダヤ人。外国メディアに勝手に話したことから睨まれ、KGBに逮捕されたとき、アンドレイやミュー・ミューに託したのが幼い彼女だった。
 両親は事故で死んだと言われても信じ切れず両親を捜し求めていたアンヌと、圧政から仲間を守ろうとしたと言われながらも、実はレアを追いつめたのは自分ではないかと自責の念を捨てられないアンドレイ。
 このときの音楽と映像のコラボは凄い。ソリストと主人公の表情が映し出され、そこに内面が見えるかのように錯覚され、音が盛り上がり、物語と交錯する。これは最高のチャイコだ。
 バイオリンの指導は、フランス国立管弦楽団の第一奏者、サラ・ネムタヌということだが、実際に弾いたのは誰か、オケはどこかはHPには出ていなかった。「のだめ」のように一流どころは使っていないのかもしれない。



 ところで、あるHPによると、2000年代初頭のロシアでは、あぶれた音楽たちをあつまめて、適当な名前をつけて海外に送り出すなんて話は結構あったそうだ。ボリショイミレニアム楽団なんて、いかにもボリショイと関係がありそうで、実際はまったく関係がない楽団もあったという。
 30年も離れていて練習もせずにというのはおとぎ話にしても、さすがはロシア。臨時の楽団でも世界水準はクリアできるのかもしれない。



 帰りはレガーロでランチにした。
 もう締まっていたのだが、気づいたシェフが入れてくれた。なかなか良いお店です。
 ちなみにお魚のランチとグラスワイン、妻も同じランチとコーヒー、デザートはセットで2人で3000円ぐらいでした。
 映画は片割れ50歳以上の夫婦割引で2人で2000円。駐輪代あわせて5200円でした。