地点「コリオレイナス」

 「ALTYの空間がグローブ座に変身」という宣伝文句とにつられて、シェイクスピアの最後の悲劇「コリオレイナス」を見てきた。
 音楽劇と書いてあったので、俳優さんが歌うのかと期待していたけど、違った。叙唱、朗唱と訳されるレチタティーヴォとも違って、なんなんだろう、これ。むかしファンシーダンスでみたお坊さんの問答に少し似ているような奇妙な話し方だった。それでも結構聞き取れたので、俳優さんもうまいし、劇場も良いのだと思う。

 なぜ、グローブ座かというと、京都を中心に活躍している「地点」という劇団が、2012年のワールド・シェイクスピア・フェスティバルに招聘され、グローブ座の依頼で「コリオレイナス」を制作・初演し、大喝采を浴びた、その凱旋公演だからだ。
 また、3階建ての円筒形の客席が平土間の立ち見の観客を囲むという空間構造を、座席や舞台の可変装置を使って真似たからだという。

 コリオレイナスはローマの英雄。ローマのために大勝利をおさめ、帰還して執政官になるが、常々民衆に罵詈雑言を浴びせていたことが祟って追放される。そして宿敵と手を結びローマを攻め落とそうとするが、母に泣き落とされ停戦。宿敵の放った刺客に殺されるという物語だ。
 ブレヒトシェイクスピアの原作を改編し、コリオレイナスをナチの独裁者と見立て、民衆の抵抗運動として描いたという。最近は、民衆の身勝手さを問いかける演出が多いとガイドに書いてあった。今回のコリオレイナスは、まるで人格が分裂しているというか、支離滅裂な戦闘マニアのような印象だった。
 ワイフ曰く、久しぶりに極めつけの変なものを見せられたとのこと。でも、見入ってしまう場面もあったそうだ。

(おわり)

○アルティのHP
http://www.alti.org/at/vol-5.html