子育てと住まいから見るベーシック・インカム

 ご挨拶を兼ねて標記のセミナーに行ってきた。
 1月11日の「 元広告マンが家族と愛媛県に移住。旋風を巻き起こす」というセミナーにコメンテーターとして登場いただく前神さんの恩師・小沢修司さんがベーシックインカムの専門家で、このセミナーでも締めをされるからだ。

 認定外保育所を運営されている延命寺昭典さんの保育の話は具体的で面白かった。保育所の経営実態など初めて聞いた。

 一方、住まいの話は今ひとつ趣旨が分からなかった。
 都市再生で大阪都心部にマンションが増え、おかげで子育て世代も増え、保育所が足りなくなっているということだ。それでは困るじゃないかということらしいが、超高層マンションは街の迷惑、次世代への負の遺産みたいな話ばかり聞いているためか、どうも感情移入できない。

 一方、大阪で暮らす新婚&子育て中の学生で、シングルインカムの中村葉子さんの話はリアルだった。いままで7000〜15000円ぐらい貰えていた新婚家庭への家賃補助がなくなり、分譲住宅購入の際の利子補給に変わったそうだ。ローンなんか組める状態じゃないのに!、私らを見捨てるのか!と憤っていた。

 福祉に金のかかる市民ではなく、税金を納めてくれる市民に来て欲しい、景気浮揚もしたいと言うことだろうが、こういうことは国全体にとってどうなんだろう。東京もそうだが、出生率が地方と比べて低い。そのくせ、美味しい年頃になったら「仕事があるよ」といってさらっていく。
 こんなことを続けていて良いのだろうか?

 ところでベーシックインカムというのは、子ども手当てのように「お金を渡すからあとは市場で調達しなさい」ということかと思っていたら、それだけの議論ではないらしい。保育施設にお金を投じるよりも、個人にお金や保育専用金券(バウチャー)をわたし、保育の質は個人が自らの目で確かめるのが良いと延命寺さんは言われていたが、全員が納得しているわけではないようだった。

 実際、無認可の保育所は悪質なところも多く、また毎年8000件が開業し7000件が廃業するという不安定な状態だという。一方、認可保育所はというと、官僚的というか無愛想というか、してやっているみたいなところもあるそうだ。
 信頼できる市場ができなければ、市場には任せられないし、公営や補助金で支えると市場が育たない。どうどう巡りで簡単には解けそうにないと感じた。
 住宅はもっと難しそうだが、保育所よりも市場に任せられている。そのうえ住宅政策、都市政策というより景気対策でお金が使われ、規制緩和が行われる。その結果、街は空き家と駐車場だらけ。建っているのは将来の維持管理や更新に不安が残る区分所有の巨大マンション。
 だが、将来のことは実感できないし、まあ、何とかなるかもしれない。というわけで選挙では一層の景気対策としての住宅・都市政策が支持されるのだろう。


(おわり)